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男の身勝手な欲望

「おい、奴が帰ってきたぞ」

 捜査本部は全国に斉藤を指名手配し、潜伏先となる可能性のあるドヤ街に捜査員を派遣する一方で、C市にある実家にも捜査員を配置していた。すると斉藤が夜10時近くになって、実家に姿を現したのである。

 実家の玄関前で捜査員に囲まれた斉藤が逮捕されたのは、事件発覚から7日後のことだった。

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「斉藤はこれまでの25回の逮捕歴のうち、実刑判決は13回ある。通算すれば30年以上刑務所で暮らした男だ。取り調べにはそうとう苦労することが予想されるが、なんとか頼む」

 捜査幹部の予想通り、斉藤は当初から犯行について、頑強に否認した。

「証拠があるのなら、勝手に調べればいいだろう」

 そう取調室でふて腐れた態度を取る斉藤に対し、取調官は粘り強く挑んだ。すると徐々に表情に変化が表れてきた。そこで畳みかけるように証拠を並べていく。やがてここまで知られたら逃げられないと観念したのだろう、斉藤は「すみません」と口にしてから、犯行についての自供を始めたのである。

「出所してからまず女を買い、それから仕事を探すために、勝手知ったるC市にやってきました。そこで住み込みの植木職人でもやろうと、剪定鋏を買って職安に行きましたが、思ったような職場がなく、仕方なしに連れ込み旅館に泊まることにしました。しかし、貯えたカネを使い果たしてしまい、宿泊費が払えなくなったので、『今晩も泊まる』と嘘をついて、スポーツバッグを置いたまま旅館を出たのです」

 仕事を探すため、歩いてドヤ街を目指したそうだが、その際にP駅近くのパチンコ店前で、博美を見かけたのだという。

「ピンク色の服を着た、目がぱっちりした4歳くらいのかわいい女の子が一人で遊んでいて、その子を見ているうちに、体に触りたくなってしまいました。そこで『おもちゃを買ってあげるから、おじさんの家に行こう』と声をかけたところ、ついてきたんです」