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なぜ「徳島」には出入り口がひとつしかない?

 徳島駅周辺の路線図を見ると、南に向かう牟岐線以外はすべて西側から徳島の市街地にやってくる。もろもろの都合を考えれば当然至極なのではあるが、これも近世以来の街道筋を継承している。

ここでもう一度路線図。南に向かう牟岐線以外はすべて西側から徳島の市街地にやってくるが、これも近世以来の街道筋の歴史が影響

 伊予街道や讃岐街道は、いずれも城下町の西側からやってきて、新町あたりを通り抜け、ちょうどいまの徳島駅の南東あたりで寺島川を渡って南東側からお城に入る。

 いまではこのお城の正式な入口から東側にかけて、国道11号沿いには徳島新聞社や徳島大学など比較的規模の大きな施設が並んでいる。徳島県庁は国道11号を少し南に、新町川を渡った場所にある。

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 また、城東高校という高校もあって、通学の学生たちの姿も目立つ。国道11号は市街地の北の吉野川大橋で吉野川を渡っており、現在の所は他の地域と結ばれる徳島市内でいちばんの大通りといっていい。その国道沿いに、行政施設の類いもおおむね集まっているというわけだ。

歴史的な経緯もあり、南側にだけ出入り口のある「徳島」

 これだけならば何の不思議もないが、駅からみると少し事情が違う。何しろ、徳島駅の出入り口は南側だけにある。北側はすぐに徳島城。徳島県庁など行政施設に向かおうとすれば、駅から線路沿いを南に歩いて跨線橋を渡るか、国道439号で線路の下をくぐるかのどちらかだ。つまり、“駅裏”にあたる。

 こうした徳島の駅前の構造を見ると、徳島という駅は城下町のターミナルにもかかわらず、お城やそれに付随する“公”の施設ではなく、一般庶民の集まる繁華街、商業地に“正面”を向けている点が大きな特徴になっているのだ。