まずは痛みのレベルが低い40%から体験を始めることにした。「それでは始めますね」と佐藤准教授が装置が接続されたパソコンを操作すると、数秒後に記者の腹筋に異変が現れた。
感じたのは、激しい腹筋トレーニングをした後の筋肉痛のように腹部全体が強張り、ひりつくような痛みだった。まだ耐えられる程度の刺激ではあるが、思わず顔をしかめずにはいられない。何か見えない手で腹部をわしづかみにされているような感覚だ。電気刺激は数回にわたって断続的に発生し、十数秒後に体験は終了した。
一番低い出力ゆえか、キツめの筋肉痛と考えれば数十秒ならば耐えられないわけではない。しかし、これが数日にわたって続くことを想像するとかなり憂鬱な気分になる。
「本当の生理痛は子宮の収縮なので、この装置が刺激している場所よりも内側に痛みを感じます。50人くらいの女性に体験していただいた時の反応をまとめると、電気刺激による生理痛は実際の生理痛と比較して、50%くらい(部分的に再現できている)の再現率だと考えています」(麻田さん)
続いて60%の出力の体験だ。先ほどと同じように腹筋の強張る感覚から始まり、今度は不快感というよりも明確に「痛み」が記者を襲った。食あたりなどの腹痛は腹部の一部に刺すような痛みが走るが、それとは全く別物である。腹筋全体がまるで塊となって記者を苦しめているようだった。
出力60%が終わった時、まだこの上に出力が2段階がある事に記者は恐怖を抱いていた。すでに相当の痛みである。何とか直立の体勢を保つことはできたが、正直な心境として、これ以上の負荷に耐えられるか不安を感じていた。
出力限界で「全然痛くない。普段はもっと痛い」と言う人も
これを何度も体験しながら微調整した制作者への敬意とともに、実験に参加した女性たちの献身にも驚きを感じた。ただ麻田さんは、装置の刺激に対する反応は人それぞれだったと振り返る。
「想像以上に、人によって痛みに対する反応が違うのには驚きました。40%で限界だという人もいたし、100%でも平気な顔をしている人もいました。私が限界まで出力を上げても、『全然痛くない。普段はもっと痛い』とケロッとしている人を見た時は絶句しましたね……。女性には普段の生理痛と比較してもらったのですが、あまりにも結果がバラついていて、この装置の痛みが平均よりも痛いのかどうかも断定できないんです。『生理痛の重さは人によって違う』というのは知識として知ってはいたのですが、ここまで個人差があるとは想定外でした」