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 装置を体験する前に、同意書へのサインが求められた。「電気刺激の強さで少しでも耐えられなくなったら迅速にスタッフに報告してください」「参加者に疲労や体調不良、身体的侵害が生じたときには、体験を中断します」といった文言が見られる。痛みを伴う装置なので当然の配慮なのだろうが、これから経験するであろう痛みが生半可なものではないという予告にも思え、にわかに緊張が増す。

佐藤克成准教授から装置についての説明を受け緊張感が高まる

 サインが完了すると、装置を体に付ける準備が始まる。電流が流れるシートを張るため、臍を挟んだ左右の腹筋あたりをアルコールシートで拭き取る。苦手な健康診断の採血を連想する感覚に、思わず全身が力んでしまう。シップのような長方形のシートを貼り付けると準備は完了だ。

「80%の出力の痛みが私ともう1人の『普段の痛みと同程度くらい』」

 シートから伸びた2本のコードは装置の本体らしき基板まで延び、そこからさらに10本ほどのコードでノートパソコンなどと接続されている。何がどうなっているのか文系の記者には構造が全く理解できない。ただ、仕組みについては「クリスティアーノ・ロナウドが広告塔になっているSIXPADを想像してもらえば大きく間違っていない」と佐藤准教授は話す。つまり、シートに電流を流すことで腹筋を収縮させ、痛みを再現するという仕組みだという。

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腹部に貼られたシートはひんやりとして気持ちよかったが…

 この装置は個人に合わせて出力を細かく調整でき、普段は最大出力の40%、60%、80%、そして100%と4段階で痛みを再現している。ちなみにVRコンテストなどの展示体験では80%までしか出力しない。試験的に100%の出力を体験した佐藤准教授曰く、「二度と体験したくない」痛みだそうだ。

 自身の月経痛の痛みを想定してこの装置を作った麻田さんは、装置の設定についてこう話す。

「80%の出力の痛みが、私ともう1人の開発者が『普段の痛みと同程度くらい』と感じたレベルになります。当初は現在の装置でいう80%の単一出力だったのですが、様々な女性に体験してもらう中で『私はいつももっと痛いんですけど』『私はこんなに痛くない』というフィードバックが多く寄せられました。そこで痛みの幅を再現するために試行錯誤を経て、現在のような4段階の痛みを体験できるようにしたんです」