織原は言い訳を試みるが、山代が荷札のことに触れると、医学部出入りの製薬会社に研究で使うと噓をつき、自分が偽名を使って注文したことを自供した。
「その吸入麻酔薬を何に使うんだ。女性に使ったんだろう」
と山代は追い込んだ。
織原は態度で認めはするが、「何もしていない」と否定を繰り返す。
調書を取る段階で、薬品の購入については認めたものの、強姦に使ったという事実は絶対に認めない。
弁護士の入れ知恵は、「取り調べには応じても調書は拒否しろ」というものだった。
「被害女性は売春婦で、すべて金を払っている」
二勾留目に入った頃、山代は送検のため、押収したケティのビデオテープを取調室に持ち込み、織原に確認させた。
ビデオの画面には、織原自身が覆面を被って撮ったケティの強姦シーンがえんえんと続く。織原は恥ずかしがる素振りを見せ、顔を背けながらもチラチラと画面を見る。
山代が、「なんでここまでやるんだ?」とくと、織原は嫌がる態度で「そんな話いいじゃないですか」と、極力話を避けようとする。
さらにテープは、心神喪失状態で寝ている女性の全裸姿を映し出す。覆面の男が女性の性器に膣内鏡を挿入している場面になると、取調室の織原はじっと見入ってピクリとも動かない。
「お前、病気じゃないのか」と、織原に水を向けると、「女が同意したからなんだ」と返してくる。
「騙して連れ込んだんじゃないのか」
と追及すると、織原は、「男と女がこういう場所に来て、2人だけで酒を飲めば、どういう結果になるかわかるでしょう」などと嘯く。
さらに、被害女性は売春婦で、すべて金を払っている、と早口で強調し、脂汗をかきながらも織原は普通の神経では想像もつかない弁解を繰り返し、女性とは合意であるとの言い訳に終始し、罪状を否認した。
毎日、織原との厳しい戦いに明け暮れ、一進一退を繰り返しつつ、追い詰めていった。