「お店への気遣いもすごくある一家」
前出の懐石料理店の店主も、夫妻の思い出をこう振り返る。
「最初の出会いは18年ぐらい前でした。私が違う飲食店で働いていた時に来店されたのですが、僕が作るご飯が徹さんの口に合ったらしく、まだ学生だった息子さんたちを連れ、ご一家で来てくれるようになりました。
一番感謝しているのは、私がつくったおにぎりを徹さんが『おいしい』と褒めてくださって、『また食べたいから、握ってね』と言ってくださったことです。それから徹さんたちの自宅からすぐ傍のここに自分で店を開いたのですが、たまたま郁恵さんが通りかかった時にご挨拶をさせていただいた。すると、その日のうちにご夫婦でお祝い品を持って店に来てくれて。
それからはずっと月に1回ぐらいのペースで、ご夫婦や息子さん、郁恵さんのお母さんを連れて夜、うちに食べに来てくれていました。店のスタッフにも気さくに声をかけてくれたりと、お店への気遣いもすごいある一家でした」
最近では高齢になって足元がふらつく郁恵の母の両脇を長男、次男で抱えて歩く姿も見かけたという。
渡辺さんが“激ヤセ” 郁恵は「塩分が高くないようにしてあげて」
渡辺さんの半生は病気との闘いでもあった。2012年4月には糖尿病が原因の心筋梗塞と診断され、6時間におよぶ冠動脈バイパス手術を受けた。2016年からは腎機能が低下し、人工透析を受け、2021年には大動脈弁狭窄症と診断された。
大食漢で、「ご飯にマヨネーズをかけてしまう」という渡辺さんの健康を管理していたのは、ほかならぬ妻の郁恵だった。
「郁恵さんはご家庭でも徹さんが食べるものに関してはすごく気を遣っている様子でしたし、うちで食べる時も『血圧が高いから塩分が高くないようにしてあげてね』と。数年前に徹さんが心臓を悪くした時、急激に痩せたなと思った時はありましたが、回復してからはうちで食事をしていましたし、食欲が落ちることはありませんでした。郁恵さんは、コロナに罹らないように、人一倍気を遣っていました。9月に来られた時も一人前をたいらげていて、健康状態が悪いようには見えなかったのですが……」(前出・店主)