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「こりゃ、死んでしまう……」

 有働は思わず呟いた。

 カリタ・シモン・リジウェイという21歳の女性が、織原からの陵辱によって死亡させられたのだとすると、その死因は何か。

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 有働は、被害女性を映したビデオテープの存在が明らかになった早い段階で、科学捜査官の服藤警部に相談を持ちかけていた。

「服さん。この映像で使用されている薬物を特定できないかなあ」

「映像からですか?」

写真はイメージです ©iStock.com

 服藤は一瞬躊躇った。映像だけで使用薬物を特定したなどという話は今まで聞いたことがなかったからだ。使用薬物の特定は通常、被害者の代謝物や胃の内容物を分析して行う。

 しかし、相手は有働理事官であり、服藤はこれまで有働からの申し出を断ったことがなかった。もちろん、結果は必ず出してきた。

「やってみましょう」

 困り果てているらしい有働からの依頼を受けた服藤は、大量のビデオテープとデッキを借りて早速映像の解析に着手した。

執念の捜査によってつかんだ「証拠」

 ビデオテープの内容をひと通り見た後で、考えをある程度まとめ、知人でもあり、有働もよく知っている昭和大学医学部麻酔科学教室助教授である増田豊医学博士のところへ意見を聞きに行った。その後も公判対策のための議論を重ねていき、結論としては、睡眠剤、鎮静剤、麻酔薬などを投与された可能性を映像から導き出した。

 一方で服藤は、ビデオテープに映し出されていた褐色瓶にも注目していた。映像の中で織原が手にしていたあの瓶だ。カリタの様子などからして、使用された薬物はおそらくクロロホルムであろうことは想像できたが、画像解析してもラベルは剝がされていて確認ができなかった。

「これ、押収されていないかなあ……」