捜査本部による家宅捜索では、褐色瓶を数多く押収している。ラベルが剝がされているものも、その中にあったはずだ。立会いを求められた家宅捜索で目にした記憶が確かにある。
科捜研に問い合わせてみると、鑑定中の瓶にそれは混ざっていた。内容物はクロロホルム。
現物を手に取った服藤は、ラベルを剝がす際、ガラス瓶に残る糊の跡に目を奪われた。
「指紋と同じかも……」
糊の跡を画像としてコンピュータに取り込んで解析してみると、特徴が映像の瓶に一致した。点と点が線になった。これらを科捜研に回して詳細な鑑定を依頼する。
服藤の“発見”は、科捜研の鑑定でも裏付けられた。
ついに判明した、カリタさんの死因
織原が被害女性たちに用いていた薬物はこれでほぼ特定できた。次の課題は死因の解明だ。服藤はまた有働に呼ばれた。
「カリタの件なんだけど、彼女はどうやら劇症肝炎で死んでいるらしいんだよ。服さん、どう思う?」
「確か、クロロホルムには急性、慢性を含めて肝臓毒性がありますよ」
「ほっ、本当か?」
「クロロホルムの肝臓毒性は、毒物の勉強をしている者なら常識的に知っていますよ。劇症化するかどうかは調べてみますが、たぶん間違いないと思います」
「ありがとう。これでいける。逮捕状が取れる」
椅子から立ち上がって服藤の手を握り、喜びをあらわにした有働だったが、その目には涙が光っていた。