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「困るのだなあ、こういう人が」若い狩人もぼやく始末…熊狩り名人が語った「残念なお客さん」たち

『朝日連峰の狩人』 #2

note

射撃の腕は連隊で三番だった

 おれは42頭撃ったけど、大井沢では33頭が最高だろう。でもおれは前方だからあまり撃つとこではないがね。

 このへんでも多い人で12、3頭だね。めったに立前やっても撃つ機会ないし、だからと言って鳴り込みしていても撃つ機会でてくることもあるからね。前方にくることもある。

写真はイメージです ©iStock.com

 1回ね、倉にクマが遊んでいてね、ブナグルミ(ブナの実)食っているの見ていて、上から勢子が入っているのだけど、勢子入っても声かけたらどんどんどんどん下手に逃げるので、とにかく連中呼ぶんだったら、声かけないとだめだし、どうせ声かけるのも鉄砲撃つのも同じだと思った。

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 射撃は連隊で3番目だった。300メーター離れて5発撃てば、10センチの黒星に3発ぐらい入るのだし、ちょうどそれぐらいの距離だし、今でも当たるはずだと思って、撃ったら当たったね。軍隊で射撃が1番の人は猟師でもなく、動作なんか緩慢だったが、中隊でも連隊でも大隊でも5発とも当たった。何か才能があるのだろう。

 勢子がかなり遠くにいた時に撃ったので、勢子に「そこの下眺めろ」って言ったら、勢子もクマを見つけてあわててバーンって撃ってた。でも当たらなかったみたいで、おれが行ったら、「この前手負いで逃がしたのいたのか」って言ってた。

 まだ火縄銃のころ、赤見堂の馬場平で追ったクマが1丈2寸とかで皮にしてあったって言うけどなあ。それが1発ぶったけど致命傷にならず、ブナの木の根元にあいた雪の穴の中で、グルグル回って逃げているの、追いかけた。でも大きいので走るのゆっくりだから、走りながら黒火薬をつけて、弾詰めて、ふたして、火縄持っていってパチリだからね。そんなして撃ったのが、1丈2寸あったって聞いた。8尺でも大きいと言うのだからね。

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ヤマケイ文庫 朝日連峰の狩人

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志田 忠儀 ,西澤 信雄

山と渓谷社

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「困るのだなあ、こういう人が」若い狩人もぼやく始末…熊狩り名人が語った「残念なお客さん」たち

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