地方自治体の首長に求められるもの
他の地方自治体の首長から、なんで明石市は新しい政策を実現できるのかと尋ねられます。難しいことでもなんでもありません。「市民のために」を考えればいいだけです。
市長には、方針決定権と予算編成権と人事権があります。加えて、市民の理解を得るためには広報活動も必要です。この4つにしっかり取り組めば、かなりの政策が実現できます。
方針決定権でいうと、私が市長になって最初にやったことは、すでに余っていた公営住宅の建設全面中止です。駅前ビルの再開発も全面的に見直して費用も削減。それで予算をつくって、子ども医療費、第二子以降の保育料、零歳児のおむつ、中学校給食、公共施設の入場料、この5つの無料化ができました。市長は一種の大統領制です。有権者から直接選ばれている立場であり、だからこそ権限が強い。それを市民のために使うんです。
また、予算編成権の名のもとに、事業をやめることなら瞬時にできます。私のように荒っぽく白紙撤回なんかすると、反発を食らうけれど、税金は市民のために大切に使うべきもの。議会と折り合いをつけるために、利権団体に予算をつけるなんてもってのほか。私の義理の父は地元観光協会の会長だったけど、当選した直後にクビにしたんやから(笑)。
「こう見えても根回しはしっかりやるタイプ」
人事権では、議会との同意人事以外は全部自由です。明石市は外部からも人を集めていて、中央省庁だけでなく、福祉職や専門職、弁護士も10人以上、民間から来てもらっています。2021年度の人事異動は27回。適時適材適所ですよ。人と金を自由に使ってこそ、思うようなまちが作れるんです。
ちなみに、こう見えても根回しはしっかりやるタイプです。市長になって4年目には、外来種のミドリガメ(アカミミガメ)の駆除条例を全国初で作りましたが、その前に、環境省に根回しに行きました。環境省は「国でやろうとしたら時間がかかるから、先にやってくれ」と。それで明石で条例を作ったら、翌年に国がミドリガメを「緊急対策外来種」に指定したんです。これも先に市職員に相談すると、「前例がないから無理です」で終わってしまう。本当は国としても自治体で先に進めてほしいことはいっぱいあるんです。そういうやり方も、後進の政治家には伝えていきたいですね。
方針決定権、予算編成権、人事権を、市民のために市長がきちんと行使するのが、有権者への責任です。でも、そこで議会や市の職員に譲ってしまう首長のなんと多いことか。そして、何もできずに任期満了。なぜそうなってしまうのか。