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多くの市長がやりがちなこと

 役所の職員ですが、「お上意識、横並び意識、前例主義」、この3つが、彼らの確信的正義なんです。市たるもの、国や県に反してはいけないという思い込みのお上意識。市たるもの、隣町と違うことをすれば差が生まれるから望ましくない、という横並び意識。そして一番大きいのは、長年やってきたことを変えてはいけない、という前例主義です。でも、それぞれの職員に悪気はないし、とても真面目です。

 多くの市長は当選後、支援者に恩返しをしてしまいがちです。選挙を手伝ってもらった業界団体に補助金をつけたり、口利きをしたり。すると、職員からすれば市長とは行動に歯止めをかけなくてはいけない対象なんです。つまり真面目な職員ほど、市長の言動をコントロールすることが仕事だと思っている。でも、私は逆です。選挙が終わったら、私を落としたかった人も含めての市長だから、応援してくれた人にも忖度しません。義理の父には文句言われましたけどね(笑)。

地方議会は「限界」を迎えている

 地方議会も構造的な限界を迎えています。議員も選挙で選ばれているからには、何かせなあかん。でも、今の時代はやることがないんです。理由は2つ。かつて高度成長期には、地方自治体の予算も右肩上がりでした。市長が市民から遠い存在でもありました。そんな時代には、遠い存在の市長に代わって、議員が市民の声を聴くという役目と、自分の地域や業界団体に予算を正当に配分してもらうという役目があった。

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 でも、今は分配する予算がありません。すると市会議員としては、地域や支持母体にできることがなくなってくる。加えて、政治の情報公開に対する意識が高まり、市政そのものの透明性が高くなってくると、市長と市民との間に立つパイプとしての役割がなくなってきます。地方議会や議員の役割は、見直しの時期に来ていると思います。

 私が市長になってすぐ提案したのは、アメリカ型の少数精鋭型議会か、ヨーロッパ型のボランティア型議会にせえということです。アメリカ型は議員の数を優秀な数名に集約して、その分給料を倍払う。ヨーロッパ型は、普段は自分の仕事をもつ人々が土日や夜間に議会を開き、市のやっていることの報告を受けて、チェックや承認をする。日本の地方議員のように、給料は高いけど、役割や位置づけが不明確という中途半端な状況は、改善されるべきでしょう。

◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2023年の論点100』に掲載されています。