アメリカで大人気のレストランが、日本で惨敗した理由とは?
とはいえ、すべての店が順風満帆というわけではない。アメリカでいくら流行っていても、日本ではウケないことがある。それはハリウッドで流行していたレストランを日本にもってきた時のことだった。現地では全米ナンバー1の朝食の店として知られ、朝8時には富裕層が行列をつくっていた。客単価は日本円で2000円から3000円ほど。その状況を見た当時の開発部門が日本でもイケると考え、契約を締結。富裕層が多いと言われる二子玉川にお店をオープンしたのだが……。
「そもそもアメリカと日本では食に関する文化や習慣が違うんですよね。アメリカ人は朝に自炊をあまりしません。レストランで食べるか、ベーグルとコーヒーをテイクアウトするようなスタイル。逆に日本は朝に外食をする文化がなく、富裕層ほど家でちゃんとごはんをつくって食べている。いくら素晴らしい店でも、すでに日本に根付いている習慣を変えるのは難しかったんです」
開店当初から状況は芳しくなかったが、すぐに撤退するのではなく、日本独自のメニューを開発するなど、さまざまな施策を講じてみた。しかし、長期的な視点でみても改善は難しいだろうと判断。オープンから1年半ほどで店を閉じることに。この時の経験から野田さんは、日本に市場がないものを流行らせる、つまり新たな市場をつくり出すのはかなりハードルが高いと実感したという。
海外で流行りの店を、どうしていち早く見つけられるのか?
さまざまな経験を積んだ野田さんが、昨秋、表参道に新たにオープンしたのがCatch the Cajun Seafood。ダンジネスクラブ(カニ)を中心に、タラバガニやズワイガニ、ロブスターなどのシーフードを手づかみで豪快に食べられる店だ。こちらはベイクルーズのオリジナル店舗で、出店のきっかけやメニュー、内装など、さまざまな部分にアパレル主体の会社だからこそのセンスやノウハウが詰まっている。
「うちの会社には、海外ファッションブランドの商品の仕入れや輸送などについて、やりとりや手配をお願いしている方がアメリカとフランスに数人いて、その方たちから現地のトレンド情報を独自に収集しています。その中にアメリカ南部の郷土料理として知られるケイジャン料理のシーフードを手づかみで食べられる店がアメリカで流行っているという情報がありました。ロサンゼルス出張の時にたまたま店の前を通ったら行列ができていたので、気になって訪れてみると、手づかみで食べるというライブ感やスパイシーな香りなど、これまでに体験したことのない感覚で楽しく食事ができたんです」
日本では見慣れない、新しいスタイルの店を始めたのはなぜか?
帰国した野田さんは、日本にはまだ手づかみで食べるキャッチスタイルの店がほとんど認知されていない、つまりは市場がないに等しい状況でありながら、このスタイルのオリジナルの店をつくろうと決意した。都内にすでに存在する同様の店が予約の取れない状態で供給が足りておらず、今後、需要が増えれば市場が大きくなると判断したのだ。なにより日本人はエビやカニなどの甲殻類が好きで、ワイワイと楽しめるため、カップルはもちろん、女子会や合コンなどで使うシーンも想像できる。さらに湯気の立った熱々の状態で出てくる山盛りのシーフードはインスタ映えがするため、SNSを通じて情報の拡散も見込めると考えた。