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 食中毒統計でアニサキス食中毒を見ると、2018年の事件数は468件、患者数478人で、細菌やウイルスを原因とするものも含め全食中毒の中で最多で、その状況は現在も続いている。

 また、最近になって急増したとよく誤解されるがそうではない。事件数が急増したのは、アニサキスを食中毒だと正しく捉え、保健所に届けるなどの認識が広がったためだ。

 前述したような芸能人の体験談を見て、刺身を食べて激しい腹痛がしたら、迷わずに医療機関を受診する人が増えたことも件数増加の一因だろう。また技術の進歩で、新鮮なまま遠距離輸送できるようになり、生で楽しむ魚種が増えたことも原因の一つとなっている。

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 より実態に近いアニサキス食中毒の患者数を知るために、匿名化されたレセプト・データベースから推定を試みた。レセプトとは、保険診療で医療機関が自治体など保険者に請求する医療報酬の明細書だが、そこには病名も記載される。その結果、患者数は2018年が2万1511人、2019年は1万7962人で、年平均は約2万人。2005~2011年の年平均は約7000人だったので、食中毒統計の値は氷山の一角であり、アニサキス食中毒は非常に多くて、しかも近年、増加していると思われる。

予防法は…

 アニサキスに感染せずに刺身を食べるには、「マイナス20℃以下で24時間以上の冷凍」が有力な選択肢となる。ただしJIS規格で家庭用冷凍庫はマイナス18℃と定められているので、設定温度の調整が可能なら温度を下げる。それが難しい場合は冷凍時間を延ばす(例えば2晩冷凍)。

アニサキスに感染せずに刺身を食べるには、「マイナス20℃以下で24時間以上の冷凍」が有力な選択肢 ©iStock.com

 また中心部がその低温を保つ事も確認したい。こうすれば解凍後の魚を刺身で食べてもアニサキス食中毒の心配はない。しかし冷凍や解凍に伴う食味の低下があれば不満も残るだろう。

 調味料は効果があるのか? 例えば醸造酢は殺菌力がとても高い調味料とされている。寿司でシャリを酢飯にするのも、元来はネタとなる魚介類の殺菌が目的であったとされる。