13年ぶりの女性コンビの決勝進出や、フレッシュな決勝進出者の面々、山田邦子の審査員就任などで大きな注目を集める2022年の「M-1グランプリ」(テレビ朝日系)。

 容姿いじりや社会属性へのいじりが世間から敬遠され、YouTubeやSNSが大きな影響力を持つようになるなど、お笑い業界が大きな変化の渦中にある中で、M-1はどう変化しているのか。

 2022年12月4日に下北沢B&Bで行われた、女性芸人の立ち位置の変遷を、人気女性芸人らのインタビューを通して描いた『女芸人の壁』筆者・西澤千央さんと、コラムニストの能町みね子さんの対談の一部を抜粋・編集したものを掲載します。(前後編の前編/後編を読む)

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左から西澤千央さん、能町みね子さん

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「ここで笑えないとファン失格だ」と思い込んでた

西澤千央さん(以下、西澤) 『女芸人の壁』の元となった連載「女芸人の今」が始まった頃、能町さんにツイッターでコメントいただいて、編集者たちとすごく喜んだ記憶があります。なぜご覧になってくださっていたのですか?

能町みね子さん(以下、能町) バラエティを楽しく見ているのに、時々ジェンダー的なところで引っかかることってあるじゃないですか。そういうことにちゃんと切り込んでくれた人って、これまで意外といなかったんじゃないかと思って。

 お笑いを大上段に振りかぶって語るのって流行ってますけど、あくまでもお笑いの方法論や個人のプロフィールに関することが多くて、社会と結び付けて語る人はそんなにいないんですよ。

 しかも、時代を築いた山田邦子さんにそのことを聞くなんて、すごく興味深いところを突いたインタビューだと思ったんですよね。そもそも、この連続インタビューはなぜ始めようと思ったんですか?

西澤 女性芸人を切り口に、社会における女性の立ち位置の変遷を考えられないかと「文春オンライン」の女性編集者から提案を受けて始めたんですよ。

 私は90年代、学生だった頃に一お笑いファンとして劇場に通っていた時期があって、やっぱり能町さんと一緒で、ときどきちょっと引っかかるな、っていうのを経験していました。でも、その時は、そこで笑えないとお笑いをわかってないことになるんじゃないかと思い込んでいて、笑えない自分が嫌だったんです。

 なので、そんな自分を封印するというか、感覚をちょっと麻痺させながらお笑いを見ていたという。この取材をしていると、当時のことがすごく蘇ってきて。90年代のお笑いって、今ではちょっと考えられないようなネタもたくさんあったんですよ。