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男性芸人によるチームプレー、観客は女ばかり…語られてこなかった「アメトーーク!」の“負の遺産”

男性芸人によるチームプレー、観客は女ばかり…語られてこなかった「アメトーーク!」の“負の遺産”

『女芸人の壁』出版記念 西澤千央×能町みね子対談 #1

genre : ライフ, 社会

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女芸人を「続ける」ことの壁

能町 当時はそうでしたよね。私も90年代後半、大学に入ってから急にお笑いにハマって、深夜放送のネタ番組ばっかり見てました。ただ、当時見てた番組を思い出すと、女性芸人の方の顔がほとんど思い浮かばないんですよ。女芸人の「冬の時代」だった。

 思い浮かぶのは、ネタ番組の「ブレイクもの!」(フジテレビ系)で5週勝ち抜きした代田ひかる(現:だいたひかる)と、アンラッキー後藤くらい。そういうピンの人がちょこちょこいるくらいで、番組内の合同コントで女性芸人が出てくる記憶はあまりない。パイレーツとか、タレント的な立ち位置の人なら思い浮かぶんですけど。

西澤 それは、結構最近まで、女性芸人がネタをがんばり続けるのは難しかったこととつながっていると思います。先が見えてしまって「劇場でネタをやり続けて、いつか売れるんだ」という気持ちになりづらいというか。選択肢は事実上、タレントとしてテレビの中の人になるか、辞めるかの二択。

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 90年代なんて、劇場も少なかったからなおさらそうだったと思いますし、若い世代でも、Aマッソの加納愛子さんは所属事務所の芸歴10年目以上だけが出演するライブになると急に女性芸人が少なくなるって言ってました。「自分たちぐらいだ」って。

 そうした時代を経て、今、女性芸人の数がすごく増えている一方で、それが必ずしもキャスティングにつながっていっていない現状はあるのかなと。以前能町さんがツイッターでおっしゃってた、芸人25人がチームを作ってコントで競い合うネタ番組「ドラフトコント2022」で女性芸人が1人しかキャスティングされなかったことなど、象徴的だと思うんですけど。

芸人の男女比が、24:1だったコント番組

能町 実は昨年も同じ番組が放送されていて、その時は女性芸人が5人いたんです。それが1人に減っちゃって「エーッ」って。

 コントだから別に何の制限もないし、どうせ男性芸人に女装させて女役をやらせるんだろうし、なぜもっと女性芸人を出さないのか。そもそも、24:1ってありえない、と思ってツイートしたら、「実力順に選んだんじゃないですか」ってリプライが来たりして……。実力の1位から順に選んでキャスティングしてるなんて本気で思ってるんですかね。 

西澤 能町さんのツイートへの反響を見て、この指摘に対して、こんなに反発する人がいるんだ、とびっくりしました。