――二重生活はしばらく続けられる予定なんですか。
セレスティア 安定した仕事とやりたい仕事を両立している今の状態は恵まれているのですが、平日の昼間のイベントやお仕事をいただいてもお断りしなければいけないので、それが悩みではありますね。
――たとえばどんなお仕事なんでしょう。
セレスティア 最近だと舞台に出てらっしゃるドラァグクイーンの方がいたり、テレビの平日の生放送だったり活動の幅は広がっているんですが、舞台のお稽古は通えないし、平日にそう頻繁に有給を取るわけにもいかなくて。二丁目もドラァグクイーンも仲間意識が強くて助け合うことが多いんですけど、お仕事という意味では競争だったりもしますからね。
目標は「親に恥ずかしいと思われないドラァグクイーン」
――最近は若いクイーンが増えていると聞きました。
セレスティア 三浦春馬さんや城田優さんが出ていた舞台『キンキーブーツ』の影響は大きかったと思います。Netflixの『ル・ポールのドラァグレース』というドラァグクイーン版のサバイバルオーディション番組も人気で、それらを見てこの世界に憧れて入ってくる子も多いです。二丁目に来てくれる女性のお客さんも増えていますね。
――セレスティアさんも若いと思うのですが、さらに下の年代も入ってくることで業界に変化は起きていますか?
セレスティア すべてを過剰に大げさにドギツく、という「CAMP」の精神は今も生きていますが、昔から主流だった自虐っぽい笑いや下ネタに加えて、より芸風の幅は広がっている感じがします。私自身もお客さんを爆笑の渦に叩き込むというよりは、綺麗、かっこいいと思ってもらう方向性ですし。今よりずっと偏見が強かった時代にドラァグクイーン文化の土台を築いてくれた先輩たちへの感謝は持ちながら、時代の変化に合わせて女装文化、ドラァグ文化ももっと多様になるといいですよね。
――セレスティアさんの目指すドラァグクイーン像を一言で言うとどんなイメージなのでしょう。
セレスティア 前に「親に恥ずかしいと思われないドラァグクイーン」と言ったことがあります(笑)。これはわかりやすく言うと立派な社会人になる、みたいなニュアンスなんですが、店舗でのショーはもちろん、撮影モデルやメディア出演など沢山の方の目に止まるお仕事もしていくことで、ドラァグクイーンの魅力や奥深さを伝えていきたいですね。小さい頃に私が抱いていたような女装へのネガティブなイメージを変えられれば、父にカミングアウトする時も胸を張っていられる気がしますから。