3年にわたる取材を通して見えてきた“大きな鍵”は日本にあり
――非常に示唆に富んだ視点ですね。
堤 今回の『ルポ 食が壊れる』の3年にわたる取材を通して見えてきたのは、今まさに私たちの食卓を大きく変えようとしているフードテックの裏側や激化する農地争奪戦、デジタル化による新たな支配構造という〈食の文明史的危機〉のみならず、生き物と土の深い循環関係であり、食と農の根源的な再生への道を探る、現場の人々の謙虚さと叡智でした。その果敢な試みは想像を超えて、世界各地で力強く拡がっていたのです。
そして何よりも、この「食と農」という分野では、他でもない私たちの国日本にこそ、これから先の人類と、全ての生き物にとっての持続可能な道へ続く、大きな鍵があったこと。取材を通して触れた、先人達の残してくれたものの価値に、私は改めて、胸がいっぱいになりました。
本書が私たちの生活、社会の中での食のあり方を見つめ直し、未来を選択するヒントになることを願ってやみません。
●プロフィール
堤未果(つつみ・みか)
国際ジャーナリスト。東京生まれ。ニューヨーク州立大学国際関係論学科卒、ニューヨーク市立大学大学院国際関係論学科修士号取得。国連、米国野村證券などを経て現職。米国と日本を中心に政治、経済、医療、教育、農政、エネルギー、公共政策など、公文書と現場取材に基づく幅広い調査報道と各種メディアでの発信を続ける。『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』で黒田清・日本ジャーナリスト会議新人賞、『ルポ 貧困大国アメリカ』で日本エッセイスト・クラブ賞、新書大賞を受賞。著書に『政府は必ず嘘をつく』『日本が売られる』『デジタル・ファシズム』などがある。WEB番組「月刊アンダーワールド」キャスター。