死亡した全員が低体温症による凍死
それにしても、なぜこのような遭難事故が起ってしまったのか。ツアー募集時のパンフレットから行程を振り返る(東京新聞・7月18日)。
7月13日
中部空港→千歳空港~旭岳温泉泊
7月14日
旭岳温泉~旭岳~白雲岳避難小屋泊(12.5キロ 所要8時間)
7月15日
白雲岳避難小屋~忠別岳~ヒサゴ沼避難小屋泊(16.5キロ 所要10時間)
7月16日
ヒサゴ沼避難小屋~トムラウシ山~トムラウシ温泉泊(12.5キロ 所要10時間半)
7月17日
千歳空港→中部空港(17時頃着)
新聞各紙の報道によると、遭難事故が起きた16日、小屋の外は激しい風雨。複数のツアー参加者がガイドに中止を申し出たが、予定より30分遅れの午前5時半、一行は小屋を出発した。降雨と強風の影響で一行の歩みは遅く、午前10時半頃、北沼分岐点付近で参加者1人が歩行困難に陥り、ガイド1人が残った(後に2人とも死亡)。16人は先行しようとしたが、今度は別の女性1人が低体温症で意識不明に。他にも体調の悪くなった参加者とメインガイドの5人がその場にとどまった(2人死亡)。メインガイドに「10人を連れて先に下りて」と指示された別のガイドと参加者たちは正午ごろ再出発した。だがガイドのペースが速く、参加者たちはついていけずに散り散りになってしまった(4人死亡)。死亡した全員が低体温症による凍死だった。
状況が明らかになるにつれ、いくつかの問題点が指摘された。
まず「ガイドによる装備品(防寒対策)のチェックが事前に行われていたのか「予備日が設けられていないことが問題」という、旅行会社の責任を問う声である。
今回の参加者がどのような防寒具を持参していたのかわからないが、夏に北海道の山へ登るとき、フリースなどの防寒着を持って行くのは登山者の常識だ。北海道の2000メーターの山は中部山岳の3000メーター級に相当する。旅行会社からチェックされるまでもなく、透湿防水性のあるレインスーツや速乾性のある化合繊の下着、ツェルト(簡易テント)やヘッドランプなどの準備を怠ってはならない。行程については、予備日の有無よりも、天候が悪くて予定通りに進めなかった場合に、多少お金はかかっても、予約していた飛行機を変更してもう1泊するという判断を添乗員ができるかどうかが重要だと思う。