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86歳店主が作る「東京一うまい春菊天そば」を新橋の名店で…2022年の「大衆・立ち食いそば」をふりかえる

2022/12/20
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なぜか埼玉県に新店が2つ誕生

 Withコロナ政策に転換してから、閉店数は確かに減ってきた。しかし、新店が増えたかといえばそうでもない。ファスト系外食産業を取り巻く環境は物価高を背景に厳しい状況が続いている。しかし、なぜか今年埼玉県に立ち食いそばの新店が2店舗誕生した。

蕎麦 陽まり(ひまり)

 埼玉県さいたま市北区宮原にある「蕎麦 陽まり」は今年5月9日にJR高崎線宮原駅から歩いて5分ほどのところにオープンした。

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 オーナーの渡辺真吾さん(39歳)は他にも外食関係の仕事をしていて立ち食いそば好きの企業人。いつか地元の宮原で出店しようと考えていてその夢がかなったということである。ほぼ揚げたての天ぷらとコシのある冷凍生麺のそば、出汁の十分利いたつゆがうまい。

「蕎麦 陽まり」は宮原駅近くでひっそりと営業していた
ほぼ揚げたての天ぷらと出汁が効いたつゆ、コシのあるそばが秀逸

波音(なみね)

 埼玉県さいたま市大宮区土手町にある「波音」は今年9月7日にオープンした。サーフィン好きの店主、細田直也さん(49歳)は元々そば好きで、よく茨城でそばを食べていて味を研究していたという。東武アーバンパークライン北大宮駅近くにいい物件があり開店を決めたという。天ぷら・つゆは独学だとか。「紅生姜天そば」はカラッと揚げられた天ぷらが秀逸。つゆも深みのある出汁と返しとのバランスがよい。宗田節は土佐清水産、鯖節と鰹節は屋久島産のものを使用と味にもこだわっている。

北大宮駅からすぐの「波音」
出汁、つゆ、天ぷら、そばとも申し分ないうまさ

 2店とも店主は30代・40代と若い。大衆そば・立ち食いそば業界も若いチカラを取り込んでいかないとこれからの発展はないだろう。若い立ち食いそばファンも多いはずだ。もっと参入してきて欲しい。

新しいジャンル健康志向の店も登場

 また、今年はそばで健康にというジャンルも注目された。十割そばはグルテンフリー。そば好きの健康志向の客層も多いはずだ。

Sobaful

 東京都文京区音羽にある「Sobaful」は「十割そばでダイエット」をメインコンセプトに2019年9月に創業したカフェスタイルの店である。今年6月に取材して印象に残った店である。

「洋風サラダそば」は豆腐のカッテージチーズ風、海苔の千切り、有機リーフ(サラダ水菜、ルッコラ、サラダ春菊など)、有機ミニトマト、さらに落花生などがのり、EVオリーブオイルをかけて味をまとめている。つゆは鰹節、宗田鰹、昆布で出汁をとる。返しとのバランスがよい。十割そばは細く喉ゴシも申し分ない。是非再訪したい店である。

カフェのようなお洒落な店内の「Sobaful」
イチオシの「洋風サラダそば」