いつも似たようなことを書いている気もするが、県庁所在地の玄関口たるターミナルというのは、それにふさわしい圧倒的な存在感を持っているのがふつうである。ここが我が県の中心だ、と言わんばかりの立派な駅舎を設えて、内実を見てもいくつもの列車が行きかって、お客でもあふれかえっている、といった具合だ。

 たびたび訪れてきた滋賀県にしても、大津駅はお客の数において草津駅や南草津駅の後塵を拝しているとはいえ、それでも県内ナンバー4。これでケチをつけられては、たまったものではないだろう。

 ところが日本は思った以上に広いもので、まったくそうした県都のターミナルとしての存在感とはほど遠い、いかにも地味な県都の玄関口があるのだ。山口県は山口市、山口駅である。

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ずいぶん少ない「山口」の乗車人員

 山口駅のお客の数は、1日平均の乗車人員で1406人(2021年度)。同じ山口県内においても、トップに君臨する下関駅(7638人)をはじめ、徳山駅や岩国駅、防府駅、新下関駅などいくつもの駅が山口駅の上位に名を連ねる。あろうことか、同じ山口市内の新山口駅が5029人で、大きく水をあけられている(ちなみに新山口駅は県内3位)。

 これには致し方ないところもあって、山口県内でお客の多い駅は山陽本線、すなわち瀬戸内海沿いに集中している。対して、山口駅はJR山口線という、言うなればローカル線の駅なのだ。JRの路線には幹線と地方交通線という国鉄時代からの分類があるが、地方交通線上に県都のターミナルがあるのは、全国広しといえども山口駅だけだ。

「新山口」とは何がちがう?

今回の路線図。新幹線の止まる「新山口」からは北東に位置する、じつは“ローカル線の駅”「山口」

 ここで、あれ? 新山口って……とご指摘の向きもあるかもしれない。新山口駅は、新幹線「のぞみ」も停まるわけで、他の地域から山口を訪れた人は、きまってこの駅から町に出る。だから事実上の玄関口、県都のターミナルの役割を果たしている。書いたとおり、お客の数も多い。

 ただ、“新”という文字を頭に冠していることからも想像できるとおり、新山口駅は山口市においては新しいターミナルに過ぎない。だいたい、駅名も2003年に改称するまでは小郡といった。古くは機関区が置かれていたような交通の要衝的な存在だったが、実態としては小さな駅に過ぎなかったようだ。