駅前の目抜き通りを歩いていくと…
ひとまず駅前の目抜き通りを歩いてゆこう。街路樹も植えられてクルマ通りも多く、よく整備された道だから、きっとその先に山口の市街地が広がっているに違いない。
そう思って進んでゆくと、少しずつお店の類いも増えてきて、クルマ通りだけでなく人通りも増えていく。無印良品の店もある。5分も歩いたところでぶつかるのが、市内を南北に(つまりおおよそ線路に並行して)貫いているアーケード商店街。アーケードの中には百貨店の井筒屋も。まさに、このあたりが山口の中心市街地なのだろう。駅から歩いて10分足らず。充分に、駅前の市街地といっていい。
さらにこのアーケードを横切って西に進む。一の坂川という市街地の中を流れる小さな川を渡ると、アーケードの商店街と対を成すような大通りと交わる。クルマ通りは他のどの道よりも盛んで、まさに市内の大動脈、軸たる大通り。
その道のさらに先にいけば、駅前からの道は幅を広げてカーブしながら突き進み、山口市役所に県立美術館、博物館ときて、山口バイパスを渡れば締めくくりとして正面に山口県庁を見る。山口県庁の裏側の山裾には、山口市のシンボルたる国宝五重塔がそびえる瑠璃光寺。この町を訪れた旅行者は、だいたいこの瑠璃光寺を目指すようだ。
いずれにしても、駅前の目抜き通りをまっすぐにいけばアーケード街や百貨店もある中心市街地にたどり着き、さらにその先には県庁舎をはじめとする行政機関が集約されているという、この町の構造はシンプルではありながらも実に効率的だ。
規模が小さいからできる、といわれたらそれまでだが、あれこれと複雑に入り組んでいるところがない。初めて訪れた人も、安心して歩くことのできる町といっていいだろう。
「山口」と県庁所在地の市街地“らしからぬ” 様子
一方で、ちょっと気になることもある。
だいたい県庁所在地の市街地というと、商店街にはチェーン系のカフェ(ドトールとかね)がいくつも並び、老若男女が行きかうものだ。さらに夜のひとときを過ごすための歓楽街的なものもある。それがふつうだ。
ところが、山口の場合はそうした雑多な空間がほとんどない。県都というよりは、言葉を選ばなければ過疎化が進んで寂れかけている小さな地方都市といったほうがぴったりくる、そんな印象なのだ。
これは、別に山口が寂れかけているからこうなった、というのとは少し違う。
繁華街の類いは、だいたいたくさんの働く人や学生たちが近くにいるから成り立つものだ。山口にもそうしたものがないわけではないが、むしろ山口市の中心部は、行政に特化されて歴史を刻んできた。商業や工業は瀬戸内沿いの町に任せ、こちらは行政の中心という役割だけを担います、というわけだ。