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 男性の部屋はホラー映画のキャラクターフィギュアや昆虫・爬虫類の標本、鹿の頭蓋骨や髑髏の置き物など、悪趣味なグッズが多くあった。ゴミ屋敷のような部屋の床に人体骨格模型が寝転がっているのを見つけ「やけにリアルだなぁ」と思った瞬間「あ、違う、これ本物だ」と気付き、警察に通報した。

大量の請求書と衣類、本、食料品が床を埋め尽くすように散乱していた

1ヶ月限定で賃貸契約を結んだが…

 部屋は、警察が骨を回収しただけのそのままの状態だった。僕は内見した後、1ヶ月限定で賃貸契約を結んだ。

 部屋を借りたとはいえ、そのままの状態で生活をするには衛生的に困難で、結局は数日間滞在しただけになってしまったのだが。

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 そのため、防護服、防毒マスク、防刃手袋、長靴を用意して、完全防備で滞在に臨んだ。埃や細菌を体内に入れてしまうことを恐れたからだ。

防護服、防毒マスク、防刃手袋、長靴を用意して、完全防備で滞在に臨んだ

 においはそれほどではなかった。おそらく家賃滞納が発生した時点でこの住人は亡くなっていたのであろう。2年という歳月は、においが薄らぐには十分な期間だ。

 それでも独特のにおいは残る。ネズミの糞や虫の死骸はたくさんあったが、においの根源は遺体が回収されたであろう場所にあった。

 Sさんが人体骨格模型と勘違いした遺体の場所は、人型サイズの土になっていたのだ。その周りは漫画本や衣類で埋め尽くされている。その場所だけが土なのだ。

人体骨格模型と勘違いした遺体の場所は、人型サイズの土になっていた

 おそらく、この男性の遺体は2年の間に腐敗し、細菌やバクテリアが細胞を分解し、ネズミや虫が遺体を食し、彼らの糞をまた細菌やバクテリアが分解し、やがて土になっていったのだろう。

 孤独死に関わると、人間は地球の一部であることを知る。全ての生物は生命を終えたあと、また別の生命の一部になる。そんな当たり前のようで当たり前とは考えなかった事実を、今回目の当たりにした。

事故物件怪談 恐い間取り3

松原 タニシ

二見書房

2022年7月11日 発売

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。