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「あれこそプラマイのネタ」

「普段、営業で外でやることも多いですからね。そして、そういう荒れたグラウンドでこそ、二人のネタは輝く。ここは俺たちのホームグラウンドだぞ、という自信はあったと思います」

 プラス・マイナスは舞台に出てきたときから、他のコンビとは明らかに雰囲気が違った。いかにも楽しげで、観る側の肩の力がふっと抜けるのがわかった。初めて最初から最後まで、プレス用の最後列まで言葉とストーリーが届き、会場は爆笑に包まれた。私も取材者の立場を忘れ、腹をよじって笑い転げた。

 ネタの中で岩橋がチアガールの真似をし、全力で手足を上げたり下げたりするシーンがあるのだが、その姿に神々しさすら覚えた。あんなバカなことを、いい大人がこれだけの熱量で演じている。真の笑いには、ほんの少し悲しみが透けて見えるものだが、岩橋の姿にも似たものが付着していた。二人から漂う人間の愛らしさに心の底から笑え、涙が出そうになった。

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 プラス・マイナスと同じ年、02年にNSC(吉本の養成所)に入学しているジャルジャルは、このネタをテレビ朝日の控え室で観ていたという。ジャルジャルはすでに決勝進出を決めており、夜から始まる決戦に備え局入りしていたのだ。ツッコミの後藤淳平が「プラマイ行ったな、という感じはありましたね」と言えば、ボケの福徳秀介はこう激賞した。

2013年にABCお笑いグランプリを制したジャルジャルの後藤(左)と福徳

「あの野球ネタ、これまで何十回、何百回と観てるんですけど、あの日は、過去最高の出来でした。あれこそプラマイのネタ、どストレートですよ」

 同じくプラス・マイナスと同期で、16年のM-1王者でもある銀シャリは、大阪チャンネルで映像配信する裏実況中継の解説をしていた。現代漫才の最高峰のツッコミと称される橋本直は、こう唸った。

「爆発してましたね。天才コンビが初めてM-1の舞台で、力が抜けて、持ってるもん、全部出せたんちゃいますか」

2016年にM-1を制した銀シャリの鰻(左)と橋本

 会場にいればより明白だった。全16組中、笑いの量、質ともに、プラス・マイナスがダントツだった。

 が、結果は非情だった。