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「寄席で受けてるからええやんって、本気でM-1と向き合うことから逃げていた。敗者復活戦を終えたときは、光の方へ行けたかなと思ったんですけどね。それまでの闇が深過ぎました。そう簡単には光と闇はひっくり返らんかった」

 決勝を控えスタジオで待機していた福徳は、盟友の終戦を目の当たりにし、涙を堪えるのに必死だった。

「ネタ前に泣いてしまったら、ネタができないんで。ほんま、あと一年あったらな。あいつら、やっと自分を見つけられたのに」

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 一昨年、昨年と審査員を務めたナイツの塙宣之はプラス・マイナスについて、こんな風に話していた。

「もう少し早く覚醒するべきだった。厳しい言い方をすれば、ラストイヤーまでかかってしまった本人たちの責任。チャンスは平等に与えられてたわけですから」

M‐1で審査員を務めるナイツの塙

一晩で人生を変えるチャンス

 もちろん二人もわかっていた。兼光がこう悔いる。

「もう一年あったら……みたいに言ってくれる人もいましたけど、最後だから気づけたのかもしれませんし。なんせ、迷いの時間が長過ぎましたね。考え過ぎなんですよ、僕も、岩橋も」

 岩橋は敗者復活戦の舞台を降りるとき、ファンに手を振りながら、何度も「ありがとう」を繰り返した。

「M-1、大っ嫌いやし、大好きでしたね」

 そして舞台から完全に姿が見えなくなる直前、六本木の夜空に向かって叫んだ。

「M-1のアホーッ!」

 会場からようやく笑いが起きた。