毎年、クリスマスが近づくと、アメリカでは必ずと言っていいほど思い出される事件がある。1996年12月25日深夜から翌朝にかけて起きた、6歳の美少女ジョンベネ・ラムジーの殺害事件だ。今日は、クリスマスの惨劇が起きてから26年になる。
事件は当時、アメリカのみならず世界の注目を浴びた。ジョンベネが美少女コンテストで何度も優勝を重ねていた幼きセレブで、両親が事件が起きたコロラド州ボールダーでは裕福な地元の名士として知られていたからだ。
アメリカではいわゆる“ハイプロファイル・ケース”と呼ばれる耳目を集める事件となったジョンベネ殺害事件。警察はこれまで、2万1,000件を超える情報を得て、19の州で1,000人以上の人々に聴取を行ったが、今に至るまで、犯人は捕まっていない。(全2回の1回目/後編を読む)
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世界最大のコールド・ケース
「ジョンベネ殺害事件は、世界最大のコールド・ケース(未解決事件)と言えます」
こう言い切るのは、ミシガン州フリントに住む私立調査員のロスコー・クラーク氏。クラーク氏は、8年前から、ジョンベネ殺害事件を個人的に調査してきた。
調査を始めたきっかけ。それは、ジョンベネの父親であるジョン・ラムジー氏が出版した本の講演会にミシガン州を訪れた8年前に遡る。講演会を聞きに行ったクラーク氏がその様子をビデオで撮影したことをきっかけに、同氏はラムジー氏とメールでやり取りを始めた。
当時、ラムジー氏は犯罪関係のコンベンションで講演した際、ボールダー警察の捜査に疑問を呈し、誤情報が流されていると訴えていた。嫌疑が真っ先にラムジー一家にかけられ、メディアもこぞってラムジー氏やその妻パッツィー、さらには、ジョンベネの兄バークまで犯人扱いするような記事を掲載していたからだ。
誰がジョンベネを殺害したのか? 事件に興味を持ったクラーク氏は独自調査を始める。
「法医学や裁判記録、隣人たちへの聞き込み、疑わしい人物のバックグラウンド調査など事実に基づいて、犯人のプロファイリングを試みました。その結果、私なりに犯人たちに辿り着くことができたのです。犯人は1人ではありません。殺害に関与したのは全部で7人いるとみています」
とクラーク氏は複数犯説に自信を見せる。
事件経過とともに、クラーク氏が調査の結果得た犯人たちのプロファイリングや実際に何が起きたのかなど、クラーク氏が推理した複数犯説を紹介しよう。