ジュリア たくさんの賞をいただいた後、髪切りマッチで負けて坊主になって、逆に髪の毛と一緒に焦りとかの負の感情がキレイさっぱり消えた気がします。自分がスターダムに来た意味はいったん証明できたかな、と。それからは自分のことだけではなく、女子プロレス界全体のことを考えて動くようになりました。ちょっと大人になって、視野が広がった気がしますね。
――怪我の危険もあって、今日では誹謗中傷にさらされることもある。そこまで大変な思いをしてまでプロレスを続けるモチベーションとは何でしょうか?
ジュリア 何だろう……? でもやっぱり単純にプロレスが好きなんだと思いますよ。自分を成長させてくれた場でもあるし、それまで知らなかった自分の意外な弱さに気づくことができた場でもあります。プロレスに対して、「野蛮で怖そう」というイメージを持っている人が多いかもしれませんが、リングの上って、選手ひとりひとりの生き様が正直に出るんですよ。それを見た人は、ひとりの人生が変わる瞬間に立ち会うこともできる。つくづくプロレスって、不思議なエンターテインメントだと思います。選手の生き様に触れて、観客の生き方も変わるかもしれない。必死で生きようとする選手を見て自分の人生にひたむきになった結果、誹謗中傷しようとする気持ちが消え失せたりしてね。……こう見えて私、実は世界平和を本気で願っているんですよ(笑)。
「自分の居場所は自分で作ってきましたから」
――「身体能力が高い選手=良い選手、ではない」みたいな話はよく聞きますね。生き様を見せられるのが良い選手だと。
ジュリア あ~、よく言いますよね。でも私、その言葉嫌いなんですよ。お客さんがそういうふうに思っていたとしても、選手側は「身体能力が低くてもいいんだ。生き様を見せればいいんだ」みたいに甘えちゃいけない。だって、リングに上がるための最低限の身体能力というものはありますし、それは本当に努力をすれば誰でも身につきます。私も子どもの頃は大縄跳びで絶対に引っかかるタイプで、特に運動経験のないままリングデビューしましたが、そこから努力で何とかしましたから!
エンターテインメントでお金を稼ぐって本当に大変だと思うんですよ。お客さんはがんばって稼いだお金を使って、プロレスのチケットを買ってくれています。選手はそのお金に見合った試合を見せていくべきだし、その覚悟がないやつはプロレスラーを辞めてほしいと思っています。
――なんだか戦い続きの人生ですね。
ジュリア 言われてみれば、そうですね。人生で何もない時がないというか、ただ楽しいだけの時期ってなかったかもしれません。自分の居場所は自分で作ってきましたから。
――のんびりしたい瞬間はありませんか?
ジュリア ……あったかなぁ? でも年取ったら、のんびりしたいですよ。引退後にやりたいことも決まっていますが、まずはのんびりしたい。それが人生初の「一息ついた瞬間」になるのかも(笑)。まだまだ先の話ですけどね!
撮影 杉山拓也
〈#2へ続く〉