1ページ目から読む
2/3ページ目

公式SNSで公開練習をライブ配信

 そして、目指すものは「緊張感」だと説明した。

「皆さんが応援したくなる羽生結弦って、独特な緊張感があった中での演技だと思う。競技会としての緊張感を味わってもらえるようなスケートをしたいと思っています」

 その宣言からわずか3週間後、羽生は有言実行する。8月10日、自身の公式SNSで、公開練習『Share Practice』を2時間にわたりライブ配信したのだ。しかも無料で。自らが経費を負担して広告収入で回収するという、今の時代の取り組みだ。実際にこの公開練習は、10万人以上がリアルタイムで視聴し、わずか8時間半で100万PVに到達。予想以上の反響に、会員制への移行を発表した。

ADVERTISEMENT

 しかもその内容が秀逸だった。世界最高の技術を詰め込み、緊張感はまさに“競技会”さながら。約1時間の氷上練習ではいまだ世界で成功者のいない「4回転ループ+3回転トウループ」を着氷させ、さらに4回転アクセルの練習も披露。18年平昌五輪で連覇したフリー『SEIMEI』の曲かけでは4回転4本を入れたプログラムをノーミスで滑りぬいた。

2018年2月、平昌五輪フィギュアスケート男子で2連覇を達成した羽生結弦のフリー演技 ©共同通信社

そして4回転アクセルへの思いは

「常に追求し続けていく姿を見ていただく機会になればいいなと思って、練習を公開するイベントを作ってみました。平昌五輪と同じジャンプ構成をノーミスして、『あの時よりも上手いんだ』ということを証明したかった」

 練習後、羽生は4回転アクセルへの思いを饒舌に語った。北京五輪で、史上初となる4回転半の認定を受けてから半年。次なる段階へと着手していた。

「北京五輪の時は、今考えてみると、回転に入るのはギュンっと早く入れた。ただ、あの時は昔の自分のアクセルの跳び方に近かったけれど、今の羽生結弦だったらもっと助走で滑れる。スピード感や回転の掛け方がもっと上手くできたんじゃないかと正直思っているので、そこをプラスアルファしていきたいです。難しいからこそ、面白いです」