完全単独でのアイスショー
羽生が挑戦を続けるなか、9月の国際大会で米国の17歳が4回転アクセルを世界初成功。「ユヅルが北京五輪で挑戦する姿に刺激を受けて、3月から練習を始めました」と話した。羽生が開いた歴史の扉が次の時代へ繋がった瞬間だった。
もちろん羽生の心にも火が点く。4回転アクセルに挑戦し続けることを宣言し、「プロのほうが上手くて当然、みたいな所を目指したいです」と言い切った。
さらに異例となる完全単独でのアイスショーも発表した。2022年に横浜と八戸で開催。そこではルールにとらわれずに、試合よりも技術レベルの高い内容に挑戦するというもの。
「競技では同じジャンプは2回しか出来ませんが、4回、5回もやるとか、技術的にも体力的にも難しいものです。試合でやっていたものをプラスアルファしてより完成度高くやる。アイスショーの枠を取っ払っていけるくらいの勢いで頑張っていきたいです」
「職業・羽生結弦」として
プロ宣言後、セカンドキャリアを模索するなか、手応えもあったのだろう。こんな言葉も残した。
「新しいフィギュアスケーターのプロ像を創り上げていきたい。『職業・羽生結弦』として、どういう風に自分を見せていくのかをやっています」
かつて長嶋茂雄が、宿帳の職業欄に「長嶋茂雄」と書いたという逸話があるが、国民栄誉賞を最年少で受賞した羽生ならば「職業・羽生結弦」という決意も、あながち冗談ではないだろう。セカンドキャリアでも、その歩みが新たな伝説となっていく。
◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2023年の論点100』に掲載されています。