日本経済の中心地、東京・丸の内から“マル秘”財界情報をお届けする人気コラム「丸の内コンフィデンシャル」。月刊「文藝春秋」2023年1月号より一部を公開します。

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代わって登壇したのは、財務戦略を担ってきた元銀行員の男

 ソフトバンクグループ(孫正義代表取締役会長兼社長)が11月11日、9月期の連結決算を発表。最終利益が1290億円の赤字となった。

 アリババグループ・ホールディング(ダニエル・チャンCEO)の株式を売却し、再評価益4兆6000億円を計上すると発表したが、最終赤字から脱せなかった。

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 最大の要因は、中核事業のビジョン・ファンドが経営不振に陥ったことだ。4―6月期に四半期ベースで過去最大の3兆1627億円の赤字を計上している。

 さらに投資家を驚かせたのは、孫氏が30分ほどの冒頭挨拶のみで引っ込んだことだ。これまで孫氏は直接、投資家に対し、自説を滔々と語ってきたが、今回、後藤芳光最高財務責任者(CFO)に詳細な業績報告を委ねた。

決算説明会で冒頭に挨拶を述べる孫正義氏 ©時事通信社

 後藤氏は2000年にソフトバンクに入社。財務畑を中心に歩みCFOに上り詰め、福岡ソフトバンクホークスの社長も兼務する。

 安田信託銀行(現みずほ信託銀行)の行員だった後藤氏は、1997年に同行が経営危機に瀕すると、光通信に転職。しかし、その光通信も経営危機に陥った。苦境にあった後藤氏を拾ったのが、安田信託銀行元会長で、当時ソフトバンクの取締役だった笠井和彦氏だ。2013年に笠井氏が亡くなると、後藤氏はメインバンクであるみずほフィナンシャルグループ(FG)との窓口となり、ソフトバンクの財務戦略を担ってきた。

 みずほFG元会長、佐藤康博氏は、FG社長時代から孫氏とのホットラインがあったが、その間を取りもっていたのも後藤氏である。