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 ここにきて後藤氏が前面に出てきたことは何を意味するのか。気の早い市場関係者の間では「孫氏は後藤氏を後継者と考えているのでは」との声も聞かれる。今回の後藤氏の登壇は、少なくともメインバンクとの関係強化を投資家に強く印象付ける効果があったことだけは確かだ。

露呈したずさんな顧客管理……暗号資産「冬の時代」

 米暗号資産交換業大手・FTXトレーディングの経営破綻が、日本の暗号資産関係者に大きな打撃を与えている。

 大谷翔平など名だたる著名人を広告塔に起用したFTX(創業者サム・バンクマンフリード氏)は、今年3月に日本の同業を買収し、日本市場へ参入。ビットフライヤー(関正明代表取締役)やコインチェック(蓮尾聡社長)など交換業大手の一角に食い込むのか注目されていた。

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FTXのCMに起用された大谷翔平選手 ©時事通信社

 ところがFRB(米連邦準備理事会)の利上げによる景気冷え込みなどによって夏場以降、暗号資産相場は低迷。そこに追い打ちをかけるように、FTXのずさんな顧客資産の管理が発覚する。暗号資産は再び「冬の時代」に入り、FTXの日本法人については債務弁済のため売りに出される見通しだ。

 FTXの破綻は、NFT(非代替性トークン)など暗号資産の派生ビジネスにも大きな影響を与えた。NTTドコモ(井伊基之社長)は11月、アクセンチュア(江川昌史社長)などと連携して暗号資産の交換やトークン発行などの共通機能を提供する新会社を設立、最大で6000億円を投資すると発表した。七月には博報堂(水島正幸社長)がスタートアップと組み、カルビー(伊藤秀二社長)が提供するNFTゲームの開発・運営を支援するとしていた。「ウェブ3」と呼ばれる次世代ウェブビジネスの領域に日本の大企業も熱を上げていたが、FTXの破綻で、いきなり出鼻をくじかれた格好だ。

 最も苦しいのは暗号資産の流動性が命となる交換業だ。前出の大手に加え、MIXI(木村弘毅社長)が大株主のビットバンク(廣末紀之社長)やGMOコイン(石村富隆社長)なども競合にひしめくが、合併・集約は待ったなしだ。

 ところが、トップクラスのビットフライヤーは、創業者兼筆頭株主である加納裕三氏の意向で、3年間で4度も社長が代わる異例の事態だ。

 コインチェックは6月、創業者兼副社長だった和田晃一良氏が取締役を退任したが、内部体制の不備などが指摘される。FTX同様、ガバナンスの弱さを露呈し、業界の信頼回復は遠のくばかりだ。

「丸の内コンフィデンシャル」の全文は、「文藝春秋」2023年1月号と「文藝春秋 電子版」に掲載されています。