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「死んだ顔を見ているうちに劣情をもよおし…」40歳女性を殺した犯人が現場に「精液」を残した“最低の理由”

『昭和の凶悪殺人事件』 #3

2022/12/30
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「北村さんが参加する社交ダンスのメンバーに聞き込みをしたところ、彼女が『×月×日にU温泉に行ったが、一緒に行った男のいびきがうるさくて眠れなかった』と話していたそうです」

 捜査員の報告を受けた捜査本部は、すぐにU温泉に捜査員を派遣して、同行した男の割り出しに努めた。すると、夕子が沢口公男と名乗る男と、ホテルに1泊していた事実を突きとめたのである。

 沢口はU市に居住する55歳の公務員だった。そこで家族と職場に内緒にするからと説得して、事情聴取をしたところ、「夕子さんとは昭和60年頃にG市の愛人バンクで知り合い、その後、バンクを通さずに交際していた」との供述を得た。沢口にはアリバイがあり、彼への嫌疑は解消されたが、その証言により、夕子が愛人バンクにいた噂は事実であるとの裏付けとなった。

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 そこでG市内の同種業者への捜査を進めたところ、夕子は4カ所の愛人バンクに会員として登録していたことが確認されたのである。

 また、事件発生時に押収した夕子の手帳に記載されていた稼働状況と収入は、愛人バンクについてであることがはっきりした。それによると彼女は、昭和60年頭から63年末までの4年間で2600万円近くの収入を得ていたのだった。さらに、事件発生時の稼働日を検討した結果、殺害されたと思われる日にも、相手の名前こそ書かれていないものの、同バンクの客と会っていた。

捜査員の前でとっさに出た筆跡のクセ

「北村さんのアドレス帳に名前が記されている男性で、なおかつ、高田さんが落としたアドレス帳に残っていた筆跡の持ち主を探すんだ」

 捜査幹部の指示を受け、捜査員は夕子のアドレス帳に記載されている人物を一人ずつ訪ねてまわった。

「昭和60年頃、電話ボックスのチラシを見てデートクラブに電話し、相手になったのが北村夕子さんでした。その後、彼女とは1週間に1回の割合で会うようになり、2人で沖縄に旅行に行ったこともある」