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「慰安婦の方々に申し訳ない」

 そして迎えた4月26日の米国訪問。安倍は、米下院でナンシー・ペロシ下院議長らと1時間におよぶ会談に臨み、その場でこう語った。

「私の真意や発言が正しく伝わっていないと思われるが、私は辛酸をなめた元慰安婦の方々に、個人として、また首相として心から同情し、申し訳ないという気持ちでいっぱいだ」

 これまでにない強い表現での謝罪だった。翌日にブッシュ大統領との会談でも改めて謝罪しているが、一時は予算委の場で「謝罪しない」とまで答えた安倍の変節とも取れる発言。この時に安倍は、慰安婦問題をめぐって、自身の歴史認識と諸外国との関係を両立することの難しさ、歴史的事実を国際社会に正確に理解してもらうことの重要性を心に刻み込んだ。しかし結局、日韓関係を前進させることのないまま、安倍は第一次政権の退陣に追い込まれるのだった。

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日韓合意の破棄を求めるデモ ©時事通信社

 そして5年の月日が流れた――。

 安倍は再び首相の座に返り咲き、2013年2月の施政方針演説で、近隣外交の課題として北朝鮮との拉致問題や中国との尖閣諸島の領有権問題を挙げる一方で、韓国については「未来志向で重要なパートナーシップの構築を目指して協力していく」と前向きに言及している。自身の歴史認識を踏まえつつ、現実的な視点での熟慮を重ねた跡が窺える。自分が総理のうちに、日韓間に横たわる歴史問題にピリオドを打つとの覚悟が感じられた。

 だが、当時、慰安婦問題の象徴とされる慰安婦像が、韓国の日本大使館前をはじめ、世界各地で次々と設置されていた。また、挺対協(韓国挺身隊問題対策協議会)や国連の人権委員会の主張により、慰安婦が性奴隷であるとのイメージも世界的に定着するなど状況は芳しくなかった。

岩田明子氏による「日韓激突『靖国と慰安婦』」の全文は、2023年1月号と、「文藝春秋 電子版」に掲載されている。

文藝春秋

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