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 ポリグラフ検査が始まり、腕と指先に器具をはめられた持山に、検査官が質問を繰り返す。そのたびに持山は「いいえ」と否定するように、事前の指示を受けていた。

 この、前哨戦ともいえる検査は、約3時間にわたって続けられた。

ついに始まった男の自供

 取調官の刑事は、外でその結果を落ち着かない心持ちで待つ。やがて、平静な表情を保ちながら検査官が表に出てくると、彼に向かってOKサインを出した。

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「ルリ子さんは殺されているようだ。絞められた可能性が高い」

 これで自信を持って持山を追及することができる。取調官は机を挟んで持山と向き合った。椅子に深く腰掛けた彼は、見たところ平静を装っている。

「(ルリ子は)アパートに帰ったら姿を消していました。私はほとんど小百合のところで過ごしていたので、行き先はわかりません」

 持山はあらかじめ用意していたであろう答えを繰り返す。それに対して取調官は、ルリ子の両親の親心を説き、早く彼女を両親のもとに帰すように訴えかけた。

 時間ばかりが刻一刻と過ぎてゆく。そのとき、取調官は持山のちょっとした態度の変化を見逃さなかった。彼の両肩の力が急に抜けたのである。

 取調官は机の上に置かれた持山の両手を、そっと両手で包んだ。すると持山が静かな声で切り出した。

「お願いがあります。これからZ市に連れていってもらえませんか……」

 そして持山は、ルリ子を殺(あや)めたことについて、一気に自供を始めたのだった。

 翌朝、持山を立ち会わせて、Z市の海岸近くにある砂防林の脇での捜索が行われた。捜査員が持山の指差す砂地を掘り進めていくと、約1メートルほど下の地中から、膝を曲げた状態で横たわる女性の遺体が発見された。

 遺体は首に紺と茶色のチェック柄のマフラーを巻き、赤いセーターに濃紺のマタニティードレスという姿で、その両手はお腹の子を庇(かば)うかのように、腹部の前に重ねられていた。

 現場に立ち会った持山は終始無言でうつむいたままで、遺体が発見された際には両手を合わせて涙ぐんだ。遺体の確認を求められて立ち上がろうとしても、よろめいて立てないほどに動揺していた。