エンジン始動の「隠しスイッチ」は有効か
次に、「隠しスイッチ」についてはどうか。隠しスイッチにもさまざまな種類があるが、もっとも手軽な方法として、燃料ポンプの配線にスイッチを噛ませる「フューエルカット(*2)」がある。
*2 イグニッションとは別の回路を設け、燃料ポンプの始動を車内に隠したスイッチで制御する。スイッチOFFの状態では、燃料がタンクから吸い上げられず、エンジンが始動しない
「フューエルカットは比較的リスクが小さく、作業自体もそう難しくないので、DIYの盗難対策として目にすることがあります。スイッチが見つからない限り車は動きませんから、その点はもちろん有効でしょう。ただ、警報などが鳴るわけではないので、犯人にスイッチを探す猶予を与えてしまう可能性があります。
さらに、周到な窃盗犯は、ターゲットの車両が車庫にある時間帯や、持ち主が家にいない時間帯を事前に調べています。そうした下調べの段階で、『このオーナーは毎回エンジンをかけるたびにどこかを弄っているな』と気づかれ、設置場所が把握されてしまうリスクもあるでしょう」(攪上氏)
こうしたリスクはフューエルカットに限らず、隠しスイッチ全般に当てはまるものだろう。加えてDIY作業の場合にはとくに、走行中の衝撃でスイッチがオフになったり、配線が断たれてしまったりといった可能性も考慮しておきたい。
車上荒らしで「全損扱い」の被害
さらに、タイヤロックやハンドルロック、隠しスイッチに共通する弱点として、「車内への侵入を防げるわけではない」という点が挙げられる。たとえ車両が盗まれなかったとしても、「車上荒らし」に遭うリスクが残ってしまう。
トヨタ・86のカスタムを趣味としていたCさんは、昨年11月、千葉県船橋市でパーツの盗難被害に遭ってしまった。
朝、Cさんが駐車場に向かうと、すでにそこには近隣住民の通報により駆けつけた警察官の姿と、変わり果てた愛車の姿があった。車体からはタイヤと社外ホイールが持ち去られ、車内からもバケットシートが奪われていた。窃盗の手口は原始的なものであり、車内への侵入は窓ガラスを割って行われたと見られる。