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疑惑1「出向職員の架空&水増し請求」

 岩本氏は2015年2月から2019年1月まで、経営統括部に毎年4~6人の事務職員を至誠会から出向させていた。女子医大が支払った出向職員への給与支払い総額は、約2.5億円。ここに「疑惑のカネ」が隠されていたのである。

 まず、覚書では支払う必要がないボーナス分が、至誠会に支払われていた(2018年6月:807万円、2019年7月:855万円)が、複数の職員がボーナスを受け取っていないと証言した。

 また、出向職員の一人に女子医大から至誠会に対して月額120万円が支払われていたが、本人が実際に受け取っていたのは20万円から40万円。最大で月額100万円を水増し請求していた計算になる。

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 別の出向職員は「朝、女子医大に行って30分でもいいので座ってこいと指示された」と周囲に話していた。告発状は次のように言及している。

「岩本氏は、この出向に女子医大の経営統括理事ないし副理事長として関与し、至誠会の代表理事会長としてその内容を知る立場にあったのであるから、至誠会から女子医大への出向の問題について、岩本氏に背任罪が成立する余地は十分あるものと思料する」(告発状より抜粋 *一部名称を置き換え)

3つの疑惑・チャート(*建築アドバイザーの報酬額は告発状の算定に準拠)
給与出金票&ボーナス

疑惑2「元タカラジェンヌ関連会社との不透明な契約」

 2020年から至誠会の職員出向は、株式会社 Kenneth & Sergio(以下、ケネス社)との業務委託契約に変更された。ここに第二の「疑惑のカネ」がある。

 岩本氏は熱心な宝塚歌劇団のファンとして知られ、特に男役で月組トップスターだった、彩輝なお(当時の芸名:彩輝直)の後援者だった。彩輝の妹もタカラジェンヌ(当時の芸名:彩那音)として活躍したが、後に結婚した相手がケネス社の代表取締役だったのである。

岩本理事長の就任祝賀会で彩輝なおは花束を贈呈した(「女醫界」より)

 2020年4月1日から、経営統括部の業務支援や理事長秘書業務全般として、ケネス社に月額385万円が支払われた。21年3月から岩本氏の専属運転手の費用(月額66万円)が加わり、月額451万円になった。ちなみに、この運転手は岩本氏の甥にあたる人物だ。ケネス社に支払われた報酬総額は、1億円を超える。

 奇妙なのは、至誠会から出向していた事務職員のうち、岩本氏の側近である2人はケネス社の業務委託に変更されても、女子医大で働き続けたことである。今年4月、週刊文春でこの疑惑を報道した直後、ケネス社は12月まで残っていた女子医大との契約を打ち切った。告発状は、ケネス社との契約に関して次のように指摘している。