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「ケネス社の請求書は、請求書番号がほとんど連番となっており、ケネス社が本件学校法人に対する請求書以外の請求書をほとんど作成していないことが窺える。このことからも、ケネス社には事業実体はほとんどなく、本件学校法人から金銭を不正に流出させる『ハコ』として存在していたことが疑われる」(告発状より抜粋)

 私的なファンである元タカラジェンヌの関連会社に、岩本氏が1億円超の契約に便宜を図っていたのは公私混同であり、仮に告発状の指摘どおり実態業務がなければ、架空請求にあたるだろう。

岩本理事長の甥が専属運転手を務める

疑惑3「建築アドバイザーに巨額の報酬」

 岩本氏の主導によって、女子医大は校舎などの建替えを進めているが、一人の建築アドバイザーに対して、2018年7月から2022年2月までの間に、総額3億円超の謝礼金・委託報酬を支払っていた(*金額は告発状の算定に準拠)。 

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 この人物は設計事務所を経営しているにもかかわらず、なぜか謝礼金・委託報酬は個人に対して支払われている。なぜ、所得税が約5割になる個人で報酬を受け取る選択をしたのか、不自然さは否めない。

 さらに、建築アドバイザーには、謝礼金・委託報酬と同時に、女子医大から給与が支払われていた時期もあるのだ。告発状は次のように問題点を示唆した。

「仮に建築アドバイザーの支払いが実態を伴っていない、あるいは、その支払いの一部が何者かに渡っている等ということになれば、女子医大は、同アドバイザーに対する支払いにおいて多額の損害を蒙っている可能性もある」(告発状より抜粋 *個人名を置き換え)

2020年に新築された女子医大・巴研究教育棟

「重要なポイントはどのような目的で支出され、何に使われたか」

 岩本理事長の「疑惑のカネ」が、刑事事件として立件される可能性について、かつて東京地検の検事を務めた経験がある落合洋司弁護士に見解を聞いた。

「岩本理事長の権限によって、女子医大にとって必要のない金が使われた、もしくは外形上は必要があると装っていても実態は私的に使われているとか、いわゆる『背任罪』が成立する可能性がある支出だと捉えることができます。重要なポイントは、金が実質的にどのような目的で支出され、何に使われたか。本来、使われるべき目的と反している実態が解明されることです。それが分かれば、背任罪や横領罪、場合によっては詐欺罪に該当する可能性があります」

女子医大は、筆者らの質問状を受けた翌日に緊急理事会を開催、2年前に遡ってケネス社との契約を承認させていた(稟議書は一部を加工処理、説明書の下線は筆者)

 今年4月6日、筆者と週刊文春編集部は、岩本理事長に対してケネス社と交わした2020年の契約について質問状を出していた。当時、ケネス社の名前を掲載しない文書で、理事会運営委員会の承認を得ていたことが判明したからである。