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「頑張ろうと思っても体がついてきません」「もう直さないでいい」…過疎地での災害復旧を妨げる“超高齢化社会のリアル”

宮崎県、知られざる台風被害2

2022/12/30

genre : ライフ, 社会

2町だけで計2000カ所以上被災。2022年9月、宮崎県を襲った台風14号の猛威

 2022年に日本を襲った台風といえば、メディアで大きく報じられたのは9月の台風15号だろう。

 静岡県で3人が犠牲になり、同県の大井川鐵道が一部区間で運行できなくなるなどした。加えて災害対応を巡り、川勝平太知事と田辺信宏・静岡市長の不仲が表面化し、話題として大きくなった。

 これに勝るとも劣らない被害が発生したのは、その1週間前に来襲した台風14号だ。日本最南端の五ヶ瀬ハイランドスキー場(宮崎県五ヶ瀬町)を休業に追い込んだ台風である(#1)。犠牲者は宮崎県で3人、高知県で1人、広島県で1人の計5人。住家などの被災も含めると、被害は全国26県に及んだ。

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 だが、これほどの災害だったのに、被災の実相はあまり伝わっていない。台風15号が誘発した政治のドタバタ劇にかき消されてしまったのだろうか。台風14号による宮崎県の被災は特に深刻で、スキー場がある五ヶ瀬町の被災箇所は700カ所以上、隣の高千穂町では1500カ所以上にのぼる。

大規模な崩落で道路が埋まった(高千穂町)©葉上太郎

「すごい雨でした。避難所の天井に打ちつける雨がザーザー聞こえ、とても眠れたものではありませんでした」

 五ヶ瀬町の甲斐索(もとむ)さん(83)が振り返る。

 小笠原近海で発生した台風14号が非常に強い勢力を維持したまま鹿児島市に上陸したのは9月18日の午後7時頃のことだ。中心気圧は935hPa。歴代4位の低さだった。

 宮崎県内ではその4時間前から宮崎市などに大雨特別警報が出されていた。身の危険を感じた甲斐さんは家族3人で町立体育館「五ヶ瀬ドーム」へ避難した。

高さ10m以上の高台にある自宅の庭がごっそり崩落

 宮崎県で雨量が多かったのは標高の高い地区だったといい、総雨量が1000mm近くになった場所もある。

 平均標高620mと、九州山地に深く抱かれた五ヶ瀬町も全域で豪雨になった。町内に置かれたアメダスの観測では総雨量584mm、瞬間最大風速28mだったと記録されている。

甲斐索さん宅の庭はごっそり落ちていた(五ヶ瀬町)©葉上太郎

 台風が去った翌19日の朝、田んぼが被災したのではないかと見に行った人が、「甲斐さん宅で崖崩れが起きている」と知らせてくれた。戻ってみると、道路から高さ10m以上の高台にある自宅の庭がごっそり崩落していた。