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 山口さんに2年以上、つきまとっていたA氏も、ギャラリーストーカーといえる。

 多くの作家は、画廊で展覧会を開き、作品を売る。美術大学を卒業したばかりの若手作家でも、作品が海外の美術館の永久コレクションに入るような著名な作家であっても、それは変わりない。作家にとって画廊で展覧会を開くということは、作品発表と販売の場を持つことであり、コレクターやファンとつながる大切な機会になっている。

 作家は画廊に滞在し、自ら接客したり、作品の解説を行ったりする。これは「在廊」と呼ばれ、作家にとっては創作活動に加えて行う重要な活動だ。

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 ギャラリーストーカーと呼ばれる人たちは、そうした在廊中の作家たちをつけ狙って画廊に出没する。どうしたら作家が在廊しているとわかるのか。簡単だ。SNSで「在廊」と検索をかければ、「今日は在廊しています」と発信している作家がたくさん見つかる。狙おうと思えば、簡単に狙えてしまう。

 画廊を訪れたギャラリーストーカーは、作家を見つけて話しかける。必要以上に居座り、美術批評のつもりで作家に説教まがいのことをまくしたててマウンティングしたり、セクハラなどの迷惑行為をしたりする。

 食事やドライブに誘ったり、アトリエを見せてほしいと言ってきたり、中にはエスカレートして、作品の購入をちらつかせて、男女関係や結婚を求めてきたりもする。

 最近の作家は、インスタグラムやツイッターを利用して作品や展覧会の情報発信をするが、オンラインでも彼らは現れる。何度もコメントしたり、長文のDMを送りつけたりするのだ。

いきなりプロポーズしてくる男性も

 実際、あるSNSで20代女性画家が個展について投稿したら、中高年男性と思われる人が、「画廊に会いに行きます。作品を全部買いたいです」と何度も独占欲にあふれたリプライを飛ばしていた。その女性画家は最初、丁寧に返事をしていたが、あまりに度重なるのでしまいにはテキストも打たず、ニコニコ顔のスタンプだけで対応するようになった。それでも彼は、彼女が投稿する度に熱心にリプライを送り続けた。

 また別のSNSでは、若手の女性作家が憤っていた。展示会場などで3回しか会ったことのない男性からいきなりプロポーズされたのだという。彼女は第三者を通じて接触禁止を申し入れたが、それでもつきまといは止まなかったそうだ。