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第三者からみれば、「熱心なファンや客なのだから、大目に見てあげればいいのに」「人気がある証拠だから仕方ない」と思うかもしれないが、パートナーや恋人でもない赤の他人から、仕事場やSNS上でしつこくつきまといを受ければ、誰にとってもかなりの負担になるだろう。
しかし、相手は自分の作品を買った、あるいはこれから購入してくれるかもしれない客である。プロとして売り出していこうという若手作家は、彼らをむげにもできず、仕方なく相手をする。そうすると、ますます図にのってつきまといはエスカレートするのだ。
逃げたくても逃げられない
ギャラリーストーカーの被害に対して、「在廊しなければいい」「SNSを止めればいい」という意見もあるだろう。そんなに困っているなら逃げればいいじゃないか、と。私自身、被害にあった作家たちに取材を始めるまで、そんなふうに考えていた。
ところが、実際には逃げたくても逃げられないし、誰も助けてくれない。「逃げればいい」では簡単に解決できない、美術業界特有の事情が背景にはある。その中で、作家たちは精神的に追い込まれ、ギャラリーストーカーによって生命の危険すら感じるようになる。酷いケースになると、筆を折る寸前まで追い詰められる。
ギャラリーストーカーはどうやって作家たちを追い詰めるのか。被害に遭ったことのある女性作家たちへの取材から、少しずつ明らかになっていった。