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「包丁で腹を刺し、チェーンソーを使って首の動脈を…」民間鑑定会社が執念の調査で覆した「自殺の証拠」 真犯人と疑われた男の壮絶な末路とは?

「包丁で腹を刺し、チェーンソーを使って首の動脈を…」民間鑑定会社が執念の調査で覆した「自殺の証拠」 真犯人と疑われた男の壮絶な末路とは?

民間鑑定の最前線#2

genre : ニュース, 社会

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「指紋はもちろんですが、口唇紋(こうしんもん)でも人を特定できるんです。浮気の決定的な証拠になったこともある。また、毛髪は薬物鑑定の大きな手掛かりです。芸能事務所から薬物使用が怪しまれる所属アイドルの毛髪が密かに持ち込まれることがあります。芸能界って思っている以上にコカインが流通しているんじゃないかなと思っています。詳しくはノーコメントですよ(笑)」(法科学鑑定研究所・山崎昭代表)

 取材時に、次々と鑑定方法を紹介する山崎代表。かつては家業であった設備関係の会社を経営しており、鑑定の世界に飛び込んだのは2001年ごろのことだった。

指紋鑑定をしている様子 ©️法科学鑑定研究所

日本では結構な数のエセ鑑定が存在

「オジが所属していた科警研(科学警察研究所)の所長を経験した鑑定業界では有名な方に、『自分もやってみたい』と相談したら背中を押してくれたので、最初は筆跡鑑定から始めたんです。でも、当初は仕事が全然来なくて…。事務所の電話が繋がっていないのかもしれないと自分で事務所に電話をかけたりしていましたね。もちろんいつも鳴るので単に仕事の依頼が少なかっただけでした。徐々に仕事が増えてきても、高額な機材の購入などがあるため、この仕事は儲けが出にくいんです。浮気調査を望んでいる方からそこまで高額な費用を頂くわけにもいかないですし、弁護士さんと違って成功報酬とかはないですから、そんな時に魂を売ってしまってもいいかな、という考えが一瞬頭をよぎってしまうんです」

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法科学鑑定研究所の山崎昭代表 撮影/宮崎慎之輔 ©️文藝春秋

 鑑定といえば、科学的、客観的なデータをもとに"疑惑に白黒つける"と思われがちだが、実際には"魂を売っている"業者もいるのだという。

「ある鑑定会社は、『この契約書は○年×月△日に偽造された』とぴったり言い当ててしまう鑑定書を書きます。本来はそこまで分からないはずなのに、クライアントに有利な鑑定書を書く。エセ鑑定は正直なところ、この日本では結構な数が存在しています。『あくまでも鑑定であり、間違えてもしょうがない』という風潮があって、ウソを書いても訴えられないからです。だから民間業者の信用度は低い風潮があるというか…。でもうちは、『とにかく、魂だけは売らない。分からないものは分からない』というのが方針です」

警視庁など捜査当局からの依頼も多い 撮影/宮崎慎之輔 ©️文藝春秋

 法科学鑑定研究所の20年の歴史のなかで、山崎代表が特に思い入れのある事件として挙げたのが有名私大医学部生の"自殺"だ。

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