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自殺と判断されたケースの再調査に乗り出す

 2005年8月、有名私立大医学部4年の男子大学生Aさんが山梨県内のラブホテルで"自殺"しているのが見つかった。それから2年近くが経った2007年春、Aさんの父親が法科学鑑定研究所に相談に来た。Aさんの件は、密室での出来事で遺書のような物も見つかったため、警察が早々に自殺と判断していたケースだった。依頼を受けた山崎さんは、当時の調査に乗り出した。

「遺体が見つかった日の前日以降のAさんの動きを調べました。夜、一人暮らしをしていた渋谷区周辺のマンションを出発し、銀行で預金を引き出し、車で高速道路に乗ると中央道の勝沼ICを降りました。近くのコンビニで、果実酒とスルメイカ、チョコレートといったつまみのほか、新聞などを縛るひも、カッターナイフ、粘着性テープなどを購入。そして再び高速道路の乗り降りを繰り返し、最終的には一宮御坂ICで降りた。ラブホテル『X』に入ったのは午後11時42分です。ちなみにこのあたりはAさんにとって全く土地勘のない場所です」

写真はイメージ ©️iStock

死亡状態の実験と検証の結果は…

 ホテルのフロントによると、Aさんは一人でチェックイン。24時間経っても出てこないため、ホテルスタッフが部屋を開けると、首を吊って絶命していたAさんが見つかったという。タオルが巻かれたベルトで首をくくり、天井から宙ぶらりんの状態ではなく、ひざをつくような形で亡くなっていた。

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「そこで私たちは、ホテル全体や部屋の構造の調査と、Aさんの亡くなり方の検証をすることにしました。また、Aさんの父親は弁護士事務所を構えていたのですが、当時、元部下のM弁護士が不審な行動を取っていたということから、信用できる調査会社にMを調べてもらいました。

 死亡状態の実験と検証の結果は『不自然だ』というものでした。部屋にはお風呂の椅子が倒れていたのですが、足が着くような高さで首を吊っていたため、その点に違和感を覚えました。さらに、現場にあった首つりに使われたとみられる革編みベルトはタオルで三重に包まれていましたが、Aさんの首にはしっかりとベルト文様の痕が残っていた。人形でも実験しましたが、直接ベルトで首を絞めなければつかない痕だったんです。誰かが事後に、タオルでくるんだベルトを首に巻き直した印象でした」