1ページ目から読む
4/4ページ目
「どうしたんです?」と出ると、「いや、この前は悪い事しちゃったと思って。ごめんな、それじゃ」とだけ仰って電話は切れた。私は呆気にとられたが、ますます先生の事を好きになり、そして申し訳ない思いでいっぱいになった。
「先生の笑顔が目に焼きついている」
一見『男はつらいよ』の寅さんのようにバンカラで大雑把・無頓着に見えながら、その実、凝り性でナイーブ。不思議な二面性を持つ桜多先生は、やはり寅さん同様憎めない、愛すべきキャラクターだった。作品も素晴らしいがお人柄も魅力的で、今回の訃報は残念でならない。せめてその傑作の数々を後世に語り伝えたいと思います。桜多先生、ありがとうございました。
最後に、よく間違えられるので注釈を。桜多先生のお名前は“さくら・たごさく”でなく“おうた・ごさく”。当時、桜の多い町・桜台(師匠・石ノ森先生の邸宅もある)に住んでいたので“桜多”。行きつけの鉄板焼き店・吾作から採って“桜多吾作”。「いいかげんな名前でしょ?」と語った先生の素敵な笑顔はいつまでも目に焼きついている。