いよいよ深名線跡の最果て地・蕗ノ台駅跡に到達
幌加内の観光協会でもらった廃線跡巡りの案内チラシ(「ほろプラ新聞」。前編参照)は、この通行止め地点を左折して道道528号線を進み、さらに脇道へそれた行止り地点に蕗ノ台駅跡があると図示している。
そのチラシのイラスト地図からはのどかなピクニック先のような雰囲気さえ漂ってくるが、林に囲まれた木道を渡り、ヒグマの出没にビクビクしながら草丈が高い繁みに挟まれたダートの細道を突き進む現実は、どこか探検の趣きである。
辿り着いた蕗ノ台駅跡は、白樺駅跡と同様に草が刈り取られて広々としていた。駅前広場だったと思われるスペースは小さく区画整理されている様子も窺えるが、鉄道駅があった痕跡は見当たらない。
ただ、現役当時の駅ホームや線路は駅前広場とほぼ同じ高さにあったので、深名線のディーゼルカーは確かにこの広場の目の前に停車し、森の中の草木が低い部分に敷かれていたと思われる線路を通って朱鞠内へと走り去っていったのだろう。
ゲートを通過していくのは工事車両だけ
蕗ノ台駅周辺にも多数生息するらしいヒグマとは幸い出会うことなく、無事に道道528号線に戻れた。その合流地点から南方への坂道を下っていくと、蕗の台橋の先にまた通行止めのゲート(ピッシリ山ゲート)が現れた。このゲートの彼方に、朱鞠内側で直面した湖畔駅跡北方の通行止めゲートがあるはずだ。
「どうせここにも誰もいないだろう」との予想に反して、ゲート前に道路工事の関係者がいた。しかも、私の目の前でゲートを開くではないか。まもなく、ゲートの奥の薄暗い木立の中からトラックが数台やって来て、ゲートを通過していった。その後、今度は別のトラックが母子里方面から姿を現し、ゲートの中へ次々と入っていった。
ゲートの前には「道路をなおしています 令和4年12月12日まで」との掲示板が立てられている。同じものが、朱鞠内ゲートにもあった。10年も通行止めのままだったこの幻の道路が、もしかしたら近いうちに通行できるようになるのだろうか。
もっとも、ここまで走ってきた朱鞠内湖北岸の道道688号線は、その1ヵ月以上前の11月上旬から冬季通行止めになる。母子里の交差点に掲出されている案内板によれば、今シーズンの通行止め期間は「令和4年11月8日11時から令和5年5月18日11時まで」。つまり、この改修工事が予定通りに完了したとしても、その時点では母子里からここまでの道は、すでに雪に閉ざされている。
30年の時を超えて、大自然に還りつつある深名線からの朱鞠内湖の車窓展望を久しぶりに追体験するドライブが可能になるかどうかは、ひとまず今年5月の雪解け時期が来るのを待つほかない。
深名線の現役当時の写真や廃線前のエピソードは、『「日本列島改造論」と鉄道』(交通新聞社新書)に収録されています。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。