1ページ目から読む
5/6ページ目

消えた集落は未開通道道の橋にその名をとどめる

 白樺駅と隣の蕗ノ台駅は、もともと地名がなかった原生林を切り拓いて鉄道駅を開設するにあたり、付近に白樺林が多いことから白樺、蕗が群生しているから蕗の台、とそれぞれ名付けられたという。

 だが、周辺に住む人がいなくなり、駅は廃止され、鉄道もなくなった白樺駅跡に立つと、地名の存在意義はほとんど感じられない。

 実際、白樺という地名は、昭和57(1982)年に幌加内町内各地で行われた字(あざ)の区域変更等の一環として廃止されている。国土地理院が発行する地形図の旧版を開くと、昭和44(1969)年測量の2万5千分の1地形図「蕗之台」には白樺の地名が駅の近くに明示されているが、昭和61(1986)年測量版の同名図では駅名としては存在するものの、地名としては記されていない。

ADVERTISEMENT

 ここが「白樺」と呼ばれていたことを示す痕跡は、30年以上前に廃止された白樺駅跡ではなく、道道に戻って蕗の台方面へ少し走ったところにある橋の欄干に見つけることができた。人跡未踏のような原生林に挟まれて流れる小さな川を渡るこの橋の名は「白樺橋(しらかばはし)」。おそらく、この一帯で唯一現存する「白樺」の公式表示であろう。

道道688号線上に架けられている白樺橋

未開通区間のはるか手前でゲートに阻まれる

 白樺橋から何度も大きなカーブを繰り返して4kmほどさらに西へ進んだところで、左折して森の中へ消えていく細い未舗装道路が現れた。ここが、湖畔駅跡の北方で通行止めとなっていた道道528号線、すなわち蕗の台朱鞠内停車場線のスタート地点である。

通行止めになっている道道688号線の蕗の台第1ゲート。ゲート手前の左折路が朱鞠内へと続く道道528号線

 その分岐点の前で、今走ってきた道道688号線を巨大なゲートが塞いでいる。以前はここからもう少し先まで行くことができたはずだが、現場には通行止めの理由は表示されていない(あとで規制情報を確認したところ、「落石の恐れ」とのこと)。

蕗の台第1ゲートから遠別方面を遠望する
この先が行止りであることを示す道路標識

 どっちみち母子里から西の沿道に人は住んでいないので、どこでどんな理由で通行止めになろうが地域交通には何の影響もないのだが、50年前から建設工事が続くこの道路、北海道も国土交通省も令和元(2019)年度の公共事業再評価において「事業継続が妥当」と判断しており、令和7(2025)年度に遠別まで全通する見込みとされている。