「風俗を辞めるため結婚しない選択はありませんでした。虐待を受けていて、生活もずっと苦しくて15歳から働いていた私からすれば、社会的に信頼が高く安定した職に就く彼は心から信頼できる大人。絶対に幸せにすると言ってくれるんだから、絶対に幸せになれる。そう思って結婚しました」
こうして2018年、19歳で結婚。母親からは、風俗で知り合ったばかりの二人という危うさから「必ず失敗する」と猛反対されたが、押し切っての結婚だった。実は彼には離婚した妻と、その妻との間に子どもがいたが、その事実はあとから知らされることになる。
結婚から3か月で妊娠が判明したが…
陽菜さんは結婚を機に別の仕事に就き、結婚3か月後には妊娠が判明した。お互いに子どもが欲しいと言っていたため、妊娠はとても嬉しかった。だが、妊娠7か月のとき、突如、夫が「中絶か離婚」を切り出してきた。
「きっかけは私の極度のマタニティブルーでした」
陽菜さんは10代半ばから精神的に不安定となり、17歳から精神科への通院歴がある。当初は抑うつ状態と診断され、以来、薬を服用しながら症状をコントロールしている。のちに「境界性パーソナリティ障害」と「解離性障害」という診断を受けているが、いずれも原因は幼少時の成育環境が大きく影響する疾患だ。こうした病気を抱えながらの妊娠は何より身近な人たちからの助けが必要だが、残念ながら陽菜さんは誰からもサポートが得られなかった。
「妊娠を機にうつ症状が悪化し、仕事が続けられなくなりました。旦那からは、働いていないなら家の掃除を完璧にすること、毎食必ず主菜と汁物と副菜二品を作ることを言い付けられていたので、その通りに頑張りました。
私の住む地方都市は電車もバスもなく車が一人一台ないと生活できない場所。平日は夫が仕事で車を使うため、買い物は常に徒歩。そもそも私は精神科から処方された薬を服用していたため、免許の取得を控えていました。
大きなお腹で毎日片道徒歩40分のスーパーまで行っていましたが、夫は土日になると朝5時から夜11時まで必ずパチンコに行く。車もなく、誰も頼れない。精神的に不安感が増し、限界を感じていました」