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 しかも、よりによって教育データの目的外使用で内々に怒られが発生し、この問題が分かっている文部科学省のまともな人が戸田市教育委員会にスライドした経緯も含めて、成田悠輔さんはあまりよく分かっていないまま適当に書いているんじゃないでしょうか。教育政策の専門家としての能力に大きな疑問符がついてきます。

 また、これは成田さんも自身で書いていますが、人工知能で解析可能なのは昨日まで起きていたことを今日も再現する前提での話であって、実際のところ、教育データのように子ども単体の学習ログ(教育データの一部)を解析してもさしたることは分かりません。

 もちろん、単純な記憶や計算などワーキングメモリー(人間の認知能力の一つ)で子どもの習熟度を測るためにMEXCBT(コンピュータ・ベースド・テスティング=オンラインでやるクイズ形式のテスト類)を使うことになっていますが、これこそ「暗記こそ学力だ」という1990年代までの「新学力観」とあまり変わらないもので、いまや中学受験で熾烈な争いになっている悪しき側面を公教育でも踏襲しかねないと議論になっているものです。これを、子どもの成績管理だけでなく子どもの暮らし関連のデータと連携すると、大変にマズいことも沢山分かってきてしまいます。

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 例えば、成績急落に見舞われた子どもにフラグが立ったので虐待の疑いがあるのではと検証すると、かなりの割合で親の離婚や病気で子どもの精神状態が勉強どころではなくなったという家庭の事情が出てきてしまいます。完全に家庭内の個人の尊厳に関わる情報であって、こんなものが安易に教育データと自治体の児童福祉とで連結され分析の対象とされるのは倫理的に通らないし、成田さんが戸田市教育委員会を持ち上げるのも、教育政策における完全なやらかしを認識していなかったからだろうと思います。教育委員会が司る公教育の教育データ利用においては、完全な目的外利用です。

成田悠輔さんの大炎上について

露出のために専門外のテーマも喋ることの弊害

 おそらくは、若く著名な経済学者のホープとして、メディアが重用することで「本来の専門ではないことも、一面の政策議論やデータだけで解答を出し一般に喋ってしまう」ことになりかねず、そこはもう、メディアに出ている研究者としての賞味期限問題にも直結します。しかも、たぶんですが、成田悠輔さんは自身を取り巻く環境をよく理解しているようにも見えるので、後は本人の身の振り方、決め方の問題だろうと感じます。

 成田悠輔さんも生き残りに必死なので、声がかかっているうちに引っかかるものは何でもやろうの精神で努力されていると思いますし、うまく分野を絞って頑張っていってほしいですね。はい。