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とにかく人と違うことをしないとダメだと思っていた

――笑い飯と千鳥は昔からネタの発想が規格外で、大阪の若手芸人たちは当時、彼らに認めて欲しいという思いで漫才をやっていたそうなんです。知らず知らずの内に2組に感化された漫才をやってしまう「笑い飯病」「千鳥病」と呼ばれる“症状”もあったらしくて。その気持ちは、わかりますか。

長谷川 わかります。僕も最初のコンビの頃、シュールといったら言い過ぎかもしれませんけど、やっぱりセンスがあるねって言われるようなことをしたい時期がありましたから。ただわけのわからない会話をしていただけなんですけど。23歳で芸人になったので、とにかく人と違ったことをしないとダメだと思っていたんです。お陰で、変わってるね、おもしろいね、みたいな見られ方はしましたけど、続かなかったです。センスも何にもなかったんで。そこから、どんどん方向が変わっていった感じがします。

撮影 山元茂樹/文藝春秋

渡辺 自分も昔は、センスで笑いを取る人たちしか見えてなかった。なので、自然とそういう方向に流されていました。

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周りからはセンスゼロでやっていると思われているんでしょうけど

――M-1にかけている芸人は、勝つためには新しいことをやらなければならないという強迫観念に大なり小なり縛られてしまっているところがあると思うんです。そこへいくと錦鯉は、そういう時代もあったのかもしれませんが、自然といろんなものが削ぎ落とされていき、自分たちにしかできないところ、自分たちにとってベストなところに収まった感じがしますよね。結果、それが新鮮だったという。

渡辺 錦鯉になってからは、ウケる方を辿って行ったら、今の形になっていたという感じです。別に2人で、ああしよう、こうしようみたいに話し合ったこともなく。周りからは、センスゼロでやっていると思われているんでしょうけど。

撮影 山元茂樹/文藝春秋

――ゼロというわけではなく、センスの見せ方、種類が根本的に違いますよね。

渡辺 この人(長谷川)の笑いの取り方を見たときに、テクニックとはなんだって思うじゃないですか。自然の偉大さを前にして、人間とはなんてちっぽけな存在なんだって思い知らされるのと同じで。だって、何のテクニックも使わないで笑いを取るんです。「何色が好き?」って聞かれて「黄色」って言っただけでウケるんですから。

――長谷川さんを見ていると、おもしろいことを言う人が必ずしもおもしろいわけではない、と思っちゃいますよね。