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「一番多いときで、1日70人やった」1回3000円で客と“行為”を…現役ストリッパーが明かす「ストリップ劇場」の暗部

『盛り場で生きる 歓楽街の生存者たち』より #2

2023/01/22

genre : ライフ, 社会

「フリーになってからは天狗で遊ばせたり(天板)、あとは抜きだけはやってあげて」

「個室」ほどのことでなければマリアは許容できた。許容度は個人差がある。マリア自身で選び、決めた内容だから不満はない。自分でも仕事が急に楽しく、「自分のもの」になるのがわかった。彼女が今も盛り場で仕事を続けられるようになった、一番の理由である。

写真はイメージです ©iStock.com

ストリップ衰退の一番大きい理由

 では今度こそはたんまり稼げたのかといえば、そうではなかった。見回すと、働ける場所が激減していたのだった。

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「最初、〈白黒〉でデビューした頃は、小屋が全国に何百軒もあったよ。再デビューのときも30軒やそこらはあったの。でもこの頃から急に減っていったね」

 数年前、私はストリップファンの男性たちを取材したことがある。熱心に各地の小屋を回っていた彼らは、激減の理由に「ネットの普及」を挙げていた。「ハダカが安くなったから」と。私もそれでなんとなく理解した気になっていたが、マリアはまったく別の理由を挙げる。

「『個室』がなくなったからよ。それがストリップ衰退の一番大きい理由」

 と言い切る。かつての特殊演劇業界の市場規模は、演劇からの〈逸脱〉に支えられていた面があったのである。いくつかの小屋は、暗部を道連れにして消えていった。

 その後、インバウンドによる団体利用なども一時盛んになっていったが、現在までのところ往時の繁栄が戻ることはなく、劇場は漸次減っていっている。では、ストリップはもう消滅するのかといえばそれも違う。むしろ、演ずる者、見る者の関係は綺麗に分化して安定し、規模は小さくなったとはいえ、新たなファンも生まれている。

かつてなかった客層が生まれてきた 

「ステージの見方が、昔と変わってきてるのね。だから、踊るほうも、どう見せるかを前より考えるようになってきたの」

 女性客が増えてきたことが大きい。そもそも異性愛男性とは裸体の見方が違う。踊り子の中には、 女性客に見られるのを好まない人もいるが、マリアは、

「私は、うれしいよ。ていうか男も女もない。来てくれるのがまず、うれしいの。それに『タッチ』できるストリッパーは、私以外にはもうほとんどいないから。話のタネになるから、ほら触っていきな、って女の子たちに言ってる」

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