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「一番多いときで、1日70人やった」1回3000円で客と“行為”を…現役ストリッパーが明かす「ストリップ劇場」の暗部

『盛り場で生きる 歓楽街の生存者たち』より #2

2023/01/22

genre : ライフ, 社会

note

 踊り子は皆、1ステージにつき22~25分の持ち時間がある。踊り、ベッド(脱衣のこと)、タッチ、ポラ(ポラロイドを一緒に撮る) を各自盛り込んでいく。昔はなかったポラ撮影は、今や取り入れない踊り子はまずいない。近年は、モデルと見まごうばかりのAV女優がステージに上がることもよく見かけるようになってきたし、アイドルイベント風の雰囲気が醸成されている。

一番上の世代になり、頼りがいあるあねさんに

 規模はささやかになりながら平穏な歓楽の一ジャンルに落ち着いてきているが、課題がないわけでもない。

 たとえばAV女優なら、所属事務所と劇場の両者にマージンがかかるわけだから、ギャラが安くても舞台に上がりたいと本人が願っても、条件が合わずに実現できないこともあるのだという。こんな愚痴をマリアに話して聞かせる女性たちが増えてきた。見渡すと、マリアは一番のベテランになっていた。頼りがいあるあねさんとしての顔を見せている。借金で首が回らず、電気代も払えないんですと相談してくる子には、少し渡してしまうことさえある。返ってこないのはわかりながら。

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「私が一番上の世代になっちゃったから、頼られることは多いかな。昔は酔っ払いとかひどい客がいて、つまみだしたりもしてたから『怖い』って言われてたけど、今は丸くなったね、とよく言われるよ」

 私が会った時点では怖さは微塵もない、柔和なお姉さん。

ストリップのために研ぎ上げた暮らし

 いま、現役で踊っている同世代の女性はもう数人を数えるのみで、昔の知人はほとんどが引退している。ストリップ嬢は若いほうが好まれる、ということに加え、身体の負荷に耐えられなくなることが大きい。実際、長年の酷使によりマリアの身体も悲鳴をあげ、ひざの故障をはじめ身体のあちこちに激痛を感じながら生活している。同じ症状で引退した踊り子を、マリアは何人も見送ってきた。それでも舞台に上がってしまえば、一切の痛みを忘れる。マリアには、長年のファンもいる。

 彼女はストリップのために研ぎ上げたような暮らしを送っている。息子や故郷の母と連絡は取り合うものの、旅暮らしに差し支えないよう離婚して以来ずっと、1人暮らし。

 誰かと一緒になる気もない。「男が皆弱すぎる。そういう人を好きになるのかな。でももう男はいらない、って思った」と、笑うだけ。自分を「仕事人間」とも言い切る。 

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。

盛り場で生きる 歓楽街の生存者たち

盛り場で生きる 歓楽街の生存者たち

フリート横田

毎日新聞出版

2022年12月27日 発売

「一番多いときで、1日70人やった」1回3000円で客と“行為”を…現役ストリッパーが明かす「ストリップ劇場」の暗部

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