夜景も愉しめる都会的な「ラクーア」、日本庭園を中心に寛ぎ空間を作った「豊島園 庭の湯」、江戸の町並みを再現し、湯屋や八百八町の屋台といったレトロさを際立たせた「お台場 大江戸温泉物語」と、各々独自の戦略を立ててきた。
この3者はいずれもハイレベルの温浴施設だが、「大江戸温泉物語」の閉館は、東京都との事業用定期借地権設定契約が終了し再契約が実現しなかったことが背景にあり、「庭の湯」はとしまえん閉園で存在感が薄くなってしまったことも否めない。なぜ、最終的にラクーアが都心スパの“覇者”となったのだろうか。そのポイントは3つある。
(1)創業以来、ターゲットにブレがない
第1の理由は、創業以来、女性客をターゲットにした戦略にブレがないこと。「スパ ラクーア」では、エステ系が11種類と充実し、食もビューティー&ヘルシーをうたっており、館内の居心地の良さは都心スパのなかで群を抜いている。その結果、女性のひとり客が多くリピーターとなり、友人やパートナーなどを連れてくれば、2人以上の客も多くなる。
筆者が実際にラクーアを訪れてみると、入館時には料金が高いと感じたものの、チェックアウト時にはそこまで高くないと意識を変えさせられたのは、滞在時間の制限がなかったからだ。加えて、タオル類を無料で取り替えてもらえることも高評価の一因になるだろう。常にコスパを意識している客層への細かい目配りもなされている。
リラクゼーションスペースやサウナには必ず、女性専用スペースがあり、あまり人目を気にせずに過ごせるのも嬉しかった。さらにフェイスマスクや入浴剤などがその場で購入できるよう、ショップにコンパクトに並んでいた。
(2)リラクゼーションエリアの充実
第2に、温泉以外のサウナやリラクゼーションエリアの充実があげられる。休日の遊び場所を考える際、他のアミューズメントパークと比べて都心スパは、「温泉」が魅力的なファクターとなる。「温泉」という一言は目にするだけで、どこか癒されるものだ。だが実際は、温泉に入浴しているのは滞在中のわずかな時間で、入浴以外のサウナやリラクゼーションスペースでの“うだうだ時間”の方が圧倒的に長いのだ。だから、この時間をいかに快適に過ごせるかが鍵を握り、その工夫にこそ都心スパの真髄が見えるのではないか。